男子ゴルフの石川遼(20=パナソニック)が、さわやかに交際宣言をした。27日に兵庫・ABCGCで開幕するマイナビABC選手権(日刊スポーツ後援)に向け、25日に会場での練習を開始。前夜に幼なじみの女性との交際が発表された直後だけに、報道の過熱に備えた厳戒態勢の中でのラウンドになった。終了後の囲み取材でも、当初は交際に関する回答はしない予定だったが、最後に交際を認めるサプライズコメント。多くは語らなかったが、さわやかな笑顔で交際への理解を求めた。

 少しだけ照れたような表情で、しかしはっきりと真剣交際を宣言した。練習ラウンドを終え、報道陣に囲まれた石川は「いいお付き合いをされているようですが」という問いに、笑顔でうなずいた。

 石川

 そうですね。ただ僕の中では、プロゴルファーである以上、ゴルフ場ではゴルフの質問以外にはあまり答えない方がいいのかな、というのがあります。昨日ファクスさせていただいた通り、温かく見守っていただけたら幸いです。申し訳ありませんが、今はそれしか言えません。

 優勝しようが予選落ちしようが、いつも快く取材に応じてきた。だがプライベートな内容の質問をされることはなかった。前夜に事務所から送られたファクスにも「この件に関して、当方および石川遼本人より何らかの発表、およびコメントを発することはございません」と明記されていた。

 今回ばかりはさすがの石川も、予定通り話をしないだろう-。張り詰めた空気の中、最後の最後で投げかけられた質問だったが、言葉を濁すこともなく堂々と答えた。そして場の緊張感にそぐわない、さわやかなスマイル。心配して居合わせた大会関係者も、思わず安堵(あんど)のため息をもらした。

 異例の交際発表から一夜。大会運営サイドは報道の過熱を懸念し、厳戒態勢を敷いて石川の会場入りに備えた。いつもは取材証の提示のみで通過できる正門にも、2人の警備員が常駐し、報道陣の身元を厳しくチェック。練習ラウンド中も、普段はつかない警備員が4人もつき、常に石川の周囲に目を光らせた。

 そんな中でも、石川はいつもと変わらず集中して調整を続けた。パター復調のために、おなかにグリップエンドをつけて体全体で振る、中尺パターを使った練習を採用。最近のショットの好調さにも満足しない。スイングの乱れがすぐに左右への曲がりにつながる、2番アイアンを使った練習でさらに磨きをかけた。

 ゴルフに対する真剣な取り組みは、大切な女性に対する姿勢とも重なる。「スター選手だからと言い寄る女性ではなく、以前からの知り合いとお付き合いや結婚をするのが望ましい」。石川家の希望は、子どもの将来を思う親なら、誰もが持つものだろう。

 地に足をつけ、結婚も見据えて真剣に交際するさまは、日本人が描く理想の息子像そのもの。常に衆人環視にさらされながら、まじめに彼女との恋愛を深めようとする石川の姿は、老若男女問わず、広く世間の共感を得つつある。

 今大会は石川が女性と交際を始めた当初の3年前、プロ初勝利を挙げた思い出の一戦でもある。「先週優勝した谷口さんは、最終日にほとんどミスがなかったけど、打ち方を変えたわけではない。優勝争いのモチベーションがそうさせているんだと思う。自分もそこにいかに上がっていけるか」。ゴルフも真剣。恋愛も真剣。いつも胸を張って、石川が超一流選手への階段を上り続ける。【塩畑大輔】