<男子ゴルフ:マイナビABC選手権(日刊スポーツ後援)>◇3日目◇29日◇兵庫・ABCGC(7217ヤード、パー72)◇賞金総額1億5000万円(優勝3000万円)

 石川遼(20=パナソニック)が、今季初優勝を射程圏内にとらえた。7バーディー、2ボギーの67をマーク。通算9アンダー207で、首位と4打差の5位とした。前半はティーショットを崖下に落としたり、あわやOBのミスショットを打ったりしただけでなく、未確認生物と遭遇するなどハプニング続き。だがそこでスコアを落とさず、しのぎきったことで、得意の後半で一気に浮上した。プロ2勝目を狙う野仲茂(41)が、2位と3打差の通算13アンダーで単独首位に立った。

 セオリー通り、ピンチの後にはチャンスがあった。10番パー4。石川は第2打をピン左2メートルにつけてバーディーを挙げ、猛チャージを開始した。ここから15番まで立て続けに4メートル以内のバーディーチャンス。この間4つスコアを伸ばすと、得意の18番パー5では2オンを決め、楽々とシメのバーディーをゲットした。

 「自分の試合運びはそうなのかな。特に15番から18番で最低2、3個は伸ばせると想定できてます」。ドライバーも前半こそ左方向に曲がったが、後半になると「気持ちよく打てた。一番良かったのは18番」と尻上がりに調子が上がった。11番パー4では、難しい下り6メートルのスライスラインをねじ込むなど、パットもさえた。

 このバーディーラッシュの伏線は、技術面の向上以外にもあった。6番パー5。左の崖下からフェアウエーを狙った第2打は、ミスから想定よりも30度以上も右へ飛び、逆サイドのOBくいを越えた。ボールが斜面を転がり落ち、コース内に戻ってOBは避けられたが、その後第4打もグリーンをオーバー。最大のピンチはこの後に訪れた。

 カップへのラインを読む最中、後方のやぶに気配を感じた石川は、思わず加藤キャディーの顔をみた。「人間の身長くらいの影が動いた気がした。人が入れる場所じゃないから、たぶん大きな動物じゃないかと」。気味悪さを打ち消すように深呼吸し、アプローチを80センチに寄せて、ハプニングだらけのホールをボギーでしのいだ。ゴルフ場関係者は「イノシシは出ることがあるけど」と首をかしげ、影の正体は不明のまま。いずれにしても、再三のピンチと“未確認生物”の脅威から逃れたことが、後半のチャージにつながった。

 08年大会でプロ初Vを飾った時も、15、16番の連続バーディーで首位の深堀を逆転した。「最終組ではないので、自分のスイングに集中しやすいのもいい」。ハプニングを乗り越え、得意のパターンを確立させたことで、今季初優勝への準備は整った。【塩畑大輔】