<米男子ゴルフ:ファーマーズ・インシュランス・オープン>◇3日目◇28日(日本時間29日)◇米カリフォルニア州ラホヤ、トーリーパインズGC南C(パー72)

 【サンディエゴ(米国)=塩畑大輔】石川遼(20=パナソニック)が、鬼門の土曜日を乗り切った。初日、2日目に続き69と、海外30戦目で2度目となる3日連続の60台をマークし、通算9アンダーの11位に浮上。3日目にスコアが伸ばせなかった昨年マスターズの苦い経験を生かし、しっかりと上位争いに食らいついた。優勝争いを目標にする「20歳のマスターズ」出場権確保のため、最終日に1つでも順位を上げて、世界ランクのポイントを荒稼ぎする。

 冷静な判断が、その後のバーディーラッシュの伏線だった。5番パー4。石川は左ラフからの第2打を、意図的にグリーン右のバンカーに打ち込んだ。「反対のグリーン左バンカーは、絶対入れてはいけないバンカーなので」。難しいライから、180ヤード先の遠いグリーンを無理に狙えば、その左バンカーに入る危険がある。徹底してリスクを回避するための判断だった。

 「よし、狙い通りだ、と思いながらバンカーに足を踏み入れた時点で、ピンチは乗り切れたのも同然。しかも数十センチに寄せて、タップインでのパー。あれで流れが変わった」。1番の3パットボギーから続いていた「守勢」から「攻勢」に転じる。直後の6、7番連続バーディーで、上位に浮上した。

 流れを読んでの、的確なギアチェンジ。試合巧者ぶりの裏には、順位の動きやすい「ムービングサタデー」の悔しい思い出がある。前夜、宿舎でベッドに入った石川は、昨年のマスターズを思い返していた。

 石川

 土曜日には苦い記憶が多い。一番はマスターズ。優勝を狙う選手と同じような順位で予選を通過したのに、そのグループの中で1人だけ、3日目も予選と同じようなプレーをしてしまった。そして自分だけが取り残された。周囲でみんながギアを上げる様子に、後からじゃなくてプレーしている最中に気づいていたのに、何もできなかった。本当に悔しかった。昨日の夜は、そのことばかりを考えていました。

 この日は苦い経験をしっかり生かし、順位を上げた。試合の流れをつかみ損ね、上位から取り残された去年の面影は、どこにも見当たらなかった。ドライバー、アイアンの精度は高まっている。さらに試合運びでも長足の進歩を遂げたことは、マスターズに向けて大きな手応えになった。

 マスターズ出場権を獲得できる世界ランク50位以内を確保する意味でも、米ツアーの上位争いは願ってもない好機。首位とは9打差あるが「難しいコースなので、何が起こるか分からない」と見る。手応えを確信に変えるためにも、最終日にさらなる浮上を目指す。

 ◆今大会での世界ランクポイント取得

 マスターズ出場が確定していない石川は、本大会2週前時点の世界ランク50位以内に入ることでの出場権獲得を目指す。現在51位のため、各大会の上位に入り、ポイントを獲得することが必要。今大会は昨年度実績で、優勝のバッバ・ワトソンが48ポイントを獲得した大会。その場合の2位28・8ポイント、3位16・8ポイントなどでも、順位は大きくアップする。10位で6ポイント、20位でも4ポイント近くあり、この場合も50位以内に上昇することは濃厚だ。