笠りつ子(27=京セラドキュメントソリューションズ)が、3年ぶりのツアー通算3勝目を飾った。首位スタートから通算7アンダーでイ・ボミ(26)とのプレーオフに突入。3連続バーディーを奪い、3ホール目で決着をつけた。13、14年と年間未勝利選手としては最多回数となるトップ10入りを記録した“善戦プロ”が、2月のタイ合宿で姉貴分の元賞金女王・古閑美保(32)から刺激を受け、ついにトンネルを抜けた。

 忘れていた歓喜が体を駆けめぐる。笠は何度も両手を突き上げた。初めてのプレーオフで、イ・ボミと2ホール続けてバーディーを奪い合った後の3ホール目。イ・ボミが先に3メートルのチャンスを外した後、笠が逆サイドからほぼ同距離のフックラインを沈めた。

 「プレーオフはしたくないなと思ったけど、やってみれば楽しくて。いや~気持ちいいです」

 12年4月ヤマハレディースの2勝目から勝てなかった。トップ10は13年が11試合、昨季が13試合。いずれもシーズン0勝選手では最多タイだった。勝てそうで勝てない分、始末が悪い。「もう全部がイヤになった」。2位に終わった昨年5月中京テレビ・ブリヂストンでは、練習場で1球打つのに約30分要するほど悩み抜いた。

 頼ったのは「先輩」だった。同じ熊本出身で、11年にツアーから退いた古閑に相談。「まだヘタクソなんだから、悩む必要ないよ」と言われ「先輩の背中を見て練習したいです」とこぼした。今年2月のタイ合宿に5日間参加してもらい、練習場で実際に背中を見ながら打ち込んだ。

 ずっとキャディーをしてくれる父清也さん(54)や、古閑先輩への感謝の思いがこみ上げ、表彰式では少し泣いた。「今年は1億円稼ぎたい。『億』ってすごいじゃないですか。あと、プロとして『名前』を残したいです」。国内メジャーV、賞金女王でもいい。トンネルを抜け、笠が新たな野望を抱きだした。【加藤裕一】

 ◆笠りつ子(りゅう・りつこ)1987年(昭62)11月4日、熊本生まれ。九州東海大中退。9歳で父清也さん(54)がコーチを務める坂田塾へ。06年東海大二高卒業後、同年プロテスト合格。10年に初シード獲得。11年ニトリレディースでツアー初優勝。160センチ、58キロ。