ジョーダン・スピース(21=米国)が大会最多アンダーパーに並ぶ通算18アンダーで初優勝した。

 グリーンジャケットを着たスピースは、柔らかな笑みを浮かべていた。「マスターズで勝つことが夢だった。家族と一緒に喜べたことは本当にうれしい」。メジャー初優勝、米ツアー通算3勝目は格別だった。

 97年のウッズに並ぶ大会史上最多アンダーパーの通算18アンダー。「21歳8カ月15日」での優勝は「21歳3カ月16日」のウッズに次ぐ史上2番目の若さ。さらにパーマー、ニクラウスらに並ぶ、39年ぶり史上5人目の完全制覇。ド派手な記録が不似合いなプレースタイルで頂点に立った。

 飛ばし屋でも、ショットメーカーでもないオールラウンダーは、得意のパットでスコアを作った。「昨晩はほとんど眠れなかった」という緊張で迎えた1番で、難しい下り3メートルのバーディートライを決めた。3番で5メートル、10番はカラーから6メートルを沈めた。最終日を首位タイで迎えて2位に終わった昨年の悔しさが、重圧に勝つ強さをくれた。

 自閉症の妹がいる。「僕のヒーロー」と言う。プロ転向後間もなくチャリティー基金を立ち上げたのも、彼女の存在と無縁ではない。「今晩電話したら、きっと『何かお土産買ってきて!』と言われるだろうな。でも、彼女はきっと僕の優勝を喜んでくれる。先週の段階で『勝ったの? ねえ勝ったの?』と何度も聞かれて困ったから」。

 優勝インタビューでは、この日の全18ホールを異例なほどの丁寧さで事細かに説明した。あふれる優しさと気遣い。歴代王者と少し毛色の違う王者が誕生した。

 ◆ジョーダン・スピース 1993年7月27日、米テキサス州ダラス生まれ。全米ジュニアでウッズ以来2人目の2勝(15、17歳の部)。16歳だった09年にHPバイロン・ネルソン選手権で米ツアー初出場し、16位。テキサス大を2年で中退し、12年プロ転向。13年から米ツアー参戦、同年ジョン・ディアクラシックで初優勝、通算3勝。昨季賞金ランク11位。優勝で世界ランクは2位に浮上。185センチ、84キロ。

 ◆スピースの記録 今回の初制覇は記録ずくめとなった。大会史上最少スコアに並ぶなど、それ以外では4日間でのバーディー数28は01年にミケルソンがマークした25を更新し、一時的にでも19アンダーに達した初の選手に。マスターズに2位でデビューした昨年から8ラウンド続けてオーバーパーがないのも史上初。米ツアーで21歳の若さでメジャーを含め3勝したのは、記録が残る1900年以降で4人目。ウッズは22歳になる前に6勝した。