「ボクもプロの藤田です」-。37歳のツアールーキー藤田大(ふとし、横浜CC)が、4バーディー、1ボギーの3アンダー68の5位と好発進した。02年日本アマ優勝などの実績を持ち、11年にプロ転向したが、ツアーでの獲得賞金は0円。ゴルフ雑誌の編集者経験のあるオールドルーキーに、ツアーでは初めての予選突破のチャンスが訪れた。

 藤田大は、上がりが9番パー4だった。厳しい1・5メートルのパーパットを残していた。手にはアマ時代から使っている、オデッセイのピン型センターシャフトの古びたパターが握られていた。「これが手放せない。いろいろ替えますが、これに戻ります」。いとおしそうに言うそのパターでしっかりとスライスラインを沈めてパー。5位と上々のスタートを切った。

 クラブのこだわりが人一倍ある。それもそのはずで、02年に日本アマ王者になるまでの5年間、ゴルフ雑誌「ゴルフスタイル」でクラブ特集を執筆、編集をしていた。17歳からゴルフを始め、神奈川大ゴルフ部で腕を磨いたゴルフ好きの素養を生かした仕事だった。

 学生時代に実績はなかったが、社会人になり上達し、00年日本オープンで44位でローアマ。02年日本アマ、09年日本ミッドアマ(30歳以上)とアマの最高峰を制した。その頃は、現在所属の横浜CCで働いていたが「もうアマチュアでは面白みがなくなった」と11年にツアープレーヤーとなることを決意。その時、妻と4歳と1歳の男の子がいる父親だった。重い決断をしたが、4年間はツアーに出場できなかった。今年ツアーに参戦し、デビュー戦となった先週の日本プロは1打及ばず予選落ち。今回が2戦目だった。

 「プロとアマの違い? そりゃあお金ですよ」。予選を通れば最低でも15万7000円入る。予選落ちすれば、経費分だけ赤字の世界だ。「まず予選通過だけ目指します。同じ藤田(寛之)だって? 恥ずかしいから言わないでください」と言いながらなでた無精ひげは予選通過すれば、そるつもりでいる。【町野直人】

 ◆藤田大(ふじた・ふとし)1977年(昭52)12月19日、神奈川県生まれ。ゴルフは17歳から始めた。神奈川大ゴルフ部出身。11年ツアープレーヤーに転向し、昨年、PGA資格認定テスト合格。昨年の最終予選会ランク308位。171センチ、67キロ。