武藤俊憲(37=赤城CC)が、12年関西オープン以来となるツアー通算6勝目を挙げた。6バーディー、3ボギーの68で回り、通算14アンダー、270でアンジェロ・キュー(フィリピン)とのプレーオフに突入。2ホール目でバーディーを奪い、自身初のプレーオフを制して新規大会の初代王者となった。ここ2試合の予選落ちからクラブセッティングを見直して復調。愛娘の期待に応えた1勝を足掛かりに、外国人選手が独占する賞金ランキング上位進出に名乗りを上げる。

 16番で20メートルのパットをねじ込み、何とか持ち込んだプレーオフでも武藤は苦しかった。いきなりティーショットが左の林へ。それでも木の間、2メートルを抜くリカバリーショットでパー。2ホール目はキューの4オンを見届け、バーディーで決めた。「ギャンブルといえばギャンブルだけど、あそこを抜かないと勝てない」。淡々と振り返った。

 そんな男が感極まる場面があった。優勝インタビューで家族の話を振られた時だ。「5個勝ってるから、6個目も勝てるよね」。次女亜耶ちゃん(6)の無邪気な言葉を気にしていた。大会前に今季新調したドライバー、ウエッジ、パター、ボールを元に戻した。「曲がるはずが曲がらない、何でここで5ヤード前にいくのって。新しいものにうまくスイッチできなかった」。昨季終盤4試合、すべて1ケタ順位に入った感覚を取り戻そうと必死だった。

 家族への負い目も消え、ツアー屈指のショットメーカーに自信がみなぎる。「賞金ランクも外国人が独占している。割り込んでいかないと。積み重ねて、賞金王になれたら」。サッカー少年だった武藤が高校でゴルフ部に入った決め手は父英夫さんの「ゴルフの方が稼げるぞ」というひと言だった。日本一稼ぐゴルファーを目指す。【亀山泰宏】