女子ゴルフの今季国内メジャー初戦、ワールドレディース・サロンパス杯(5日開幕、茨城GC東C)で熊本出身の青山加織(30=コンフェックス)が、熊本地震発生後初めて試合に出場する。

 3日は同コースで練習ラウンドが行われたが、青山は予定より遅れてスタートした。「寝坊です…」。本人はばつが悪そうに話したものの、事情がある。「外を通る車の音が、(地震で)揺れる前の音と似ていて過剰に反応してしまうんです。怖くて、寝ていても、すぐに起きてしまう。1人は嫌ですね…」。熊本では知り合いの家に身を寄せていた。1日、都内に宿泊して1人になった時、変化に気付いたという。

 地震により、母と暮らす熊本市内のマンションの中はメチャクチャになった。「母を1人残しておけない」と、2週前のフジサンケイ・レディースを欠場。スポンサーなどが次々に物資を送ってくれた。その後もさまざまな人から支援を申し出てくれる連絡が続き、家族には十分すぎる量だからと1度は断った。しかし、避難所の現実を知り、送ってもらった上で自ら配ることを決めた。「私自身、家の補修とかもあるから、義援金という形では熊本に何もできない」という歯がゆさも、大きな理由の1つだった。

 自ら軽トラックのハンドルを握り、2週間で15カ所以上を回った。「1日2日で状況が変わるから」と連絡を取って現状を確認しながら、何度も通った避難所もある。「場所によって必要な物が変わる。老人ホームならパンは(かんで)食べるのが大変なので、おかゆとか柔らかい食べ物の缶詰。でも(実際は)ミスマッチが多いんです。(必要な場所に必要な物が行き届くよう)仕分けをする仕事が一番大変」と支援の難しさを語る。

 練習を再開できたのは26日。1日に熊本を離れる直前まで活動を続けていた。試合に出る準備は万全ではない。それでも、前を向く。「調子が悪いとか(クラブに)当たらないとか、ゴルフのことを考えたり、プレーすることの方が、地震に比べたら楽ですから」。淡々と重い言葉を紡ぎ、最後に口にしたのは感謝だった。「いろんな方に物資を送って協力していただいたり(SNSで)励ましのコメントをいただいた。その気持ちを忘れずにプレーしたい」と力強く誓った。