イ・ボミ(28=韓国)が今季4勝目を挙げ、ツアー史上8人目の誕生日優勝を飾った。4バーディー、3ボギーの72で回り、通算9アンダー、210で大江香織(26)全美貞(33=韓国)と並んでプレーオフ(PO)に突入。日本で圧倒的な強さを誇るPOは1ホール目でバーディーを奪って勝負を決めた。ツアー通算19勝目で韓国ツアーの永久シードにあと1勝。リオデジャネイロ五輪女子ゴルフ金メダルの朴仁妃(28=韓国)に刺激を受け、20年東京五輪を目指すことも誓った。

 イ・ボミにとって誕生日に勝つのは初めてだった。前日夜には亡き父ソクジュさんが夢枕に立った。昨季、年間獲得賞金の国内最高額を更新した時以来のことだったという。朝のスタートでは「今日が誕生日の…」と紹介され、試合後はバースデーソングのプレゼント。「今日を忘れないと思います」と喜びに浸った。

 POでスイッチが入った。最初に打った第3打。残り140ヤードから8番アイアンで1メートルにつけた。後から打った2人はピンを大きく外して勝負あり。この日は前半で3打差をつけながら、失速して追いつかれていた。清水重憲キャディー(42)も「後半の流れからプレーオフに入った瞬間、なぜあの完璧なショットが打てるのか」とうなるしかない。日本ツアーのPOは通算8勝1敗となった。

 執着心が違う。高校生の時、現在も教わるチョ・ボムス・コーチ(63)を驚かせたことがある。1日8時間の練習中、昼食休憩を挟む他の選手を尻目に1人打ち続けた。休むよう促されても「大丈夫です」と言って聞かない。数多くのプロを育ててきたコーチも「衝撃を受けた」と振り返る。

 賞金ランクは2位に約4200万円差。2年連続賞金女王の先に大きな夢を描く。「友達のインビ(朴)の金メダルを見たら『私も金メダルを』と思いました」。4年後の東京が、目標に変わった。【亀山泰宏】