石川遼(24=CASIO)が復活優勝を遂げた。2位に2打差の首位から出て5バーディー、2ボギーの69、通算15アンダー273で2位に5打差をつけての快勝だった。2月に腰の故障で米ツアーを離脱、日本ツアー復帰2戦目での勝利は、第1日から首位を走る09年サンクロレラ・クラシック以来自身2度目の完全優勝で飾った。昨年12月の日本シリーズ以来のツアー通算14勝目。3月の結婚後、初めての優勝でもあり、試合後は家族への感謝の言葉があふれ出た。

 強い石川が帰ってきた。2位に4打差で迎えた難関16番の第1打でフェアウエーをとらえると勝利を確信した。18番グリーンではファンからの温かい拍手に包まれた。復帰2戦目での復活Vに「早かったですね」と白い歯がこぼれた。

 長い1日だった。前半33で2位に5打差をつけた。だが、10番でボギー、11番は第1打を左の林に打ち込んだ。ここで雷雲接近による中断。「僕にはラッキーでした。中断していなかったら、ドタバタしていたかも」。嫌な流れを断ち切った。3時間近く待つ間には食堂で同コースの名物料理「鯛茶漬け」を頼み、「ご飯3杯食べました」。再開後は11番をパーにおさめ、12番で8メートルのバーディーパットを沈めて、完全に主導権を握った。

 苦しい時期を乗り越えた。2月、50ヤードのアプローチで腰が痛み、戦列を離れた。「明日よくなるかも」と願い、翌日痛みに悩まされる日々が続いた。「(回復に)どれだけかかるか、わからなかった」。不安もストレスもあった。治療とリハビリを重ね、20ヤードから打ち始め、離脱のきっかけで「トラウマになっていた」50ヤードを打てたのが5月。少しずつ距離を伸ばし、痛みが出ては縮めの連続で、アイアンだけでラウンドができた時は「ゴルフができるだけで楽しかった」。

 そんな中、3月に結婚した妻について「僕は常に感謝しています」。普段から石川のゴルフを見守り「予選落ちが続いても(妻は)とてもポジティブな人なので」支えになった。「もしケガをしていなかったら、一緒にいる時間はこれほど長くはなかった。人生という大きな視点で見ると(この半年は)悪い時間じゃなかった」。遠回りではなかったと言いたげだった。

 今回はコース近くの貸別荘に妹葉子さん(20)弟航くん(17)ら家族と関係者計8人で泊まっての生活。そんな家族の絆も励みになった。さらに「ワンちゃんにも感謝です」と、実家で留守番をしていた愛犬「サン」の存在も強調した。

 愛する人たちの力を借りて復活優勝は、米ツアー復帰への大きな足がかりとなるはずだ。【岡田美奈】

 <石川この半年>

 ▼離脱 2月10日、米ツアーのペブルビーチ・プロアマの前日に腰の痛みから欠場を決意。前週は松山が優勝したフェニックス・オープンで予選落ち、当時から違和感があったと話す。

 ▼結婚 3月2日、自身のブログで一般女性との結婚を公表。「これからもプロゴルファーとしてさらに成長できるよう頑張っていきたい」。

 ▼ゲスト解説 4月15日、日本ツアーの東建ホームメイト杯のテレビ解説のため会場入り。「男子ツアーの魅力を伝えたい」。熊本地震を受けての募金活動にも協力。3試合連続でゲスト解説を務めた。

 ▼公傷制度 5月8日、米ツアーに公傷の申請をする意向を表明。復帰についてはメドが立たず。

 ▼実戦復帰 7月7日からの日本プロ選手権に出場も、77、79の通算12オーバー127位で予選落ち。痛みはなかったが、「試合のように100%で打つ練習が少なかった」。

 ▼今後の予定 次週のフジサンケイ、昨年覇者でもあるANAオープン(9月15日から)に出場予定。10月の米ツアー復帰を目指す。松山とともに11月W杯にも出場。