男子ツアー通算6勝の川岸良兼の次女川岸史果(22=加賀電子)が、ツアー初優勝に王手をかけた。首位タイスタートで68をマークし、通算9アンダー207の単独首位に抜け出した。「すごいマイナス思考」という父を反面教師に、15番でボギーも気持ちを崩さずプレー。今日5日に初の最終日最終組で、日本初の“父娘ツアーV”に挑む。

 ドライバーでぶっ飛ばしフェアウエーからピンまで残り121ヤード。終盤15番パー4で、川岸のバーディーの条件は整った。ところがピッチングウエッジで左に曲げ、この日初のボギー。「引っ掛けました。無意識のうちにバーディーが欲しくなったのか」。ただ、引きずらない。反面教師の教え? を胸に最終18番パー5でバーディーを奪い返した。

 「怪物」と呼ばれた父良兼も、娘にかかれば形無しだ。「すっごいマイナス思考。いつもネガティブなことばかり口にして、プラス思考を聞いたことがない」と笑う。しかもせっかちで、車を運転して渋滞に巻き込まれるとすぐ怒る。「そういう感情って、ゴルフにも影響するじゃないですか? 私は切り替えを大事にします。お父さんみたいにならないように」-。

 母で女子プロの麻子(50)によると、良兼は娘に素直になれない。「もっと練習しろ」と言えばいいのに「そんな練習で勝てるか? 地獄に落ちろ」ととんでもないことを口走る。川岸は小学生の時、その言葉を真に受け「パパは私を好きじゃないかもしれない」と悩んだ。麻子が慌ててフォローし、事なきを得た。

 良兼はタイ合宿の真っ最中。前日3日に麻子が首位浮上を電話で報告すると「え~! やべえ、やべえ!」と大興奮。この日のホールアウト後はすぐに「いいぞ、いいぞ」とメールが入った。単独首位で迎える最終日。「ひょっとしたら応援に来るかも」と麻子は言うが、川岸は「どっちでもいいですよ」と笑う。互いに素直になれない父と娘だが、ツアー初優勝にかける思いはきっと同じだ。【加藤裕一】