マスターズで日本男子初のメジャー優勝を狙う松山英樹(25=LEXUS)の強さの秘密に迫る連載第2回は「パット」。弱点との声もあった部分に明らかな変化が生まれている。プロゴルファー田中秀道(46)は、昨年10月からの日米5戦4勝という快進撃を前に、アドレスの際に両肘を体から離して浮かせ、両腕が描く形が三角形から五角形になった点を指摘する。

 「これまで松山選手は、勝負どころで決めきれる精度を求め練習で感覚を磨いてきたと思います。その感覚重視のスタイルに、ロボット化して機械的に打つ部分を導入した。8対2の割合で感覚が勝っていたものが、半々になったイメージです」。感覚は研ぎ澄まされればすさまじいが、狂いが生じた時に立て直すのが難しい。松山が使う練習器具、2つ並べた鉄の球に当たらないようボールを転がす「パッティングチューター」も、ストロークの機械化に役立っているとみる。

 腕発信ではなく、強い下半身と体幹を生かし、大きな筋肉を使ってストロークする。腕の感覚を殺し、真っすぐ引いて、真っすぐ出す-。単純化された作業から田中は「彼は手先のコントロールにもろさを感じたのではないでしょうか」と推察する。米ツアーでは多種多様な芝への対処が求められる。「機械的にいつも同じストロークができれば、強さの制御だけで、考えなくても対応できます。一流の選手に求められる対応力ですが、“超一流”には対応力が必要ないんです」。

 松山もかつて「ストロークが良かったら(芝の違いは)何も気にならない」と話している。グリーン上も間違いなく進化している。

 ◆田中秀道(たなか・ひでみち)1971年(昭46)3月29日、広島県生まれ。広島・瀬戸内高卒。91年プロテスト合格。95年フィリップモリスでツアー初優勝。02年から米ツアー参戦。ツアー通算10勝。166センチ、62キロ。