松山英樹(25=LEXUS)の強さに迫る連載最終回は、世界トップクラスと称される「アイアンショット」の秘密を解き明かす。「今年はグリーンが(軟らかくてボールが)止まるコンディションだった。僕はスピンが少ないので、止まる環境だったから戦えた」。マスターズで5位となった15年冬に行われたインタビューで松山は言っていた。「どうやってやっていけばスピンがかかるとかは、常に考えています」とも。

 スピン量への渇望を訴えた5カ月後のオーガスタ。優勝争いを演じて7位。硬くて速い、ガラスの形容にふさわしいグリーン相手に、第3日にはパーオン率77・78%を記録。全体2位の数字だった。この年、進藤大典キャディーも「英樹だけが止まらない、というケースがなくなってきた」と話していたことがある。

 プロゴルファー田中秀道(46)は自らの米ツアー参戦経験を交えて語る。「大事なのはスピンコントロール。上からたたきすぎる僕のアイアンショットは、グリーンが硬ければ、はねて戻ってこなかった。逆に軟らかければ、戻りすぎて手前の池に落ちていた」。松山は違う。ボールに対してクラブが鋭角に下りず、横から入る。「丸く振れるアイアン。これによって生み出されるスピンコントロール技術は世界トップの枠に入ります」。増えたスピン量を自在に操る術がある。

 昨秋の活躍が鮮烈すぎたゆえに、直近の成績を心配する声もある。ゴルフ解説者として松山の取材経験もある田中は首を振る。「ある種、オーガスタに合わせて1度膝を曲げ、ジャンプする準備としか思えないんです」。日本の悲願が松山に託される。(終わり)