3年ぶりの復活優勝を目前に上田桃子(30=かんぽ生命)が、涙の2位に終わった。2打リードの最終18番でボギーをたたき、バーディーの西山ゆかり(34)に追いつかれて通算4アンダー212でプレーオフ(PO)へ。1ホール目で第2打を池に落とし大逆転を許した。生まれ育った熊本を襲った震災から1年。傷を負った故郷へ朗報を届けることはできなかった。西山は2年ぶりのツアー2勝目とした。

 晴れ渡った故郷の空を見上げ、こぼれ落ちそうになる涙をこらえた。小さなため息を2度、吐く。上田は1分近く、泣くのをこらえた。「この1年を考えたら私より熊本の人の方がキツかった」。泣いちゃダメ-。だが、クラブハウスで待っていた家族の顔を見た瞬間、こらえていた涙が頬を伝った。熊本地震から1年。自分のためではない。熊本のために勝ちたかった。

 「どうしてもこの大会で優勝したかった。熊本の人の心に届くゴルフがしたかったのに…。実力が足りなかった。悔しいですし、本当に申し訳ない。苦しい現実になってしまった」

 結末は残酷だった。最終組の西山、申ジエと激しいV争い。11番で3人が並ぶ。申が脱落し、2位西山に2打差をつけてパー5の最終18番を迎えた。決めれば優勝だった1メートルのパーパットを外し、通算4アンダーで並んだ西山とのPOに突入。地元の後押しを受け、勝負に出た。1ホール目、18番は第2打でグリーンを狙った。ボールは手前の池の縁に当たり、無情にもポチャリと沈んだ。

 いつまでも目を赤く腫らす上田のそばで母八重子さんは言った。「私は(POで)池に入った時に『よくやった桃子!』と思いました。攻めて負けたんだから後悔はない。五輪なら次まで4年。でも桃子は1週間後に試合がある。次、勝てばいい」。07年に初優勝を飾ったのも地元熊本だった。ツアー12勝目は逃したが、故郷に感動は届いた。【益子浩一】