岩田寛(36=フリー)が5バーディー、1ボギーの67で回り、通算9アンダーの204で首位と1打差の2位に浮上した。超完璧主義者が「今までにない」と納得する1打も飛び出すなど、15年7月以来となるツアー通算3勝目へ光明が見えた。

 会心という表現でも軽い。2番パー4、残り187ヤードから5番アイアンで第2打を放つと、岩田は新岡隆三郎キャディーの方を振り向いた。「この球すごくない?」。コンビを組んで10年になる相棒も「打った瞬間、言いましたからね。初めてですよ」と驚く反応。わずかにフェードしながら、ピンそば2・5メートルについたが、行方は見なかった。「最近はいい球が出ても、まぐれで出ている感じ。2番に関してはスイングも、音も、スピン量も一致した」。2番がパーでも余韻に浸らずにいられなかった。

 自己満足では終わらない。「(あのショットが)出てくれて、向かう方向みたいなものが分かるんじゃないか、きっかけになるんじゃないか」。優勝を争う上でも大きい。自身の状態と順位にギャップを感じつつ「ひょっとしたら、自分が思っているより、ちょっとうまいのかもしれないですね」。誰もが分かっていながら、本人だけが信じていなかった事実を口にできるくらいは前向きになれた。

 伝え聞いた新岡キャディーが「ホントにヒロシ(岩田)が言ったんですか?」と耳を疑うコメントの数々。そのよりどころとなる理想の弾道は、ホールアウト後の練習でもついに再現できなかった。「そんなに簡単には出ないですよ」。岩田にとって、それだけ貴い一打だった。【亀山泰宏】