松山英樹(25=LEXUS)が、残り8ホールから逆転を喫して涙を流した。1打差2位から一時は単独首位に立つも、同組ジャスティン・トーマス(24=米国)に競り負けて日本男子初のメジャー制覇はならず。5バーディー、6ボギーの72で通算5アンダーの279で5位だった。

<田中秀道の目>

 松山選手はショットの違和感を口にしていましたが、アプローチのクオリティーも高く、高速グリーンのタッチも合っていました。今回、メジャーを制することはできませんでしたが「何が良くなかったのか」ではなく「結果としてゲームに勝てなかった」ということだけだと思いますね。

 最終日の残り9ホールの緊張感は今までと違ったのではないかと想像します。ここ何年かのメジャーで勝ちたい、勝つんだという気持ちに、クウェイルホローのコースの難しさが加わりました。しかも前週ブリヂストン招待で最終日に61のスコアを出して優勝し、自他ともに、世界中が認める優勝候補でした。メンタル的な部分ですが、すごく上に次元の違う立ち位置が、まだあったのだろうと思います。

 後半の汗のかきように独特の緊張感が伝わってきました。汗を拭くところにも緊張した空気が出ていたように見えます。違う次元の大変さが見えた新しい経験になったと思います。全英オープンの優勝争い、ブリヂストン招待の優勝に続く全米プロでした。違う次元で戦う心身のしんどさが微妙に出ていたのではないかと想像しますね。どこかにほんの少しだけ、心と体のギャップがあったのではないかと感じています。

 自分で優勝まで完結できなかった悔しさ。涙に直結するぐらいの勝たなければならない責任感。あの涙は彼の美学を感じさせてくれました。メジャー制覇は最後の1つのかみ合わせだけだと思わせてくれるプレーだったと思います。(プロゴルファー)