宮里藍(32=サントリー)が、涙で現役生活に別れを告げた。首位と8打差の27位から出た最終日は2バーディー、4ボギーの73で回り、通算1オーバーの214で32位。18番グリーンでは感極まって泣いた。メジャー制覇の夢はかなわなかったが「自分自身にお疲れさまと言いたい」。世界から愛されたプレーヤーが、コースから去った。

 現役に別れを告げる宮里にスポットライトを当てるかのように、曇り空から光が差し込んだ。最終18番グリーン。パーパットを打つ前に、観衆の中に予選同組だったクリーマー(米国)と曽ヤニ(台湾)を見つけた。決勝に進めなかった2人は、宮里を祝福するため滞在を延ばして待っていた。必死に涙をこらえる。パットを沈めると、もうダメだった。男子ゴルフのレジェンド、ゲーリー・プレーヤー氏(81=南アフリカ)から花束を受け取り、2人の仲間と抱き合った。

 「(泣いたら)パットを打つどころではなくなるから、見ないようにした。1つだけ心残りは、メジャーのタイトルは欲しかった。でも、世界一にもなれた。自分が(米ツアーに)来た時に、それが達成できるとは夢にも思っていなかった。挑戦する意味では、悔いなくやることができた」

 会見ではサプライズが用意されていた。東北高で後輩の有村智恵、原江里菜、そして上田桃子らのビデオメッセージが流れる。両手で顔を覆うと、また涙があふれ出た。

 もがき続けた最後の18ホール。なかなかバーディーチャンスにつけられず5、6番で連続ボギーをたたいた。9番で約5メートルのバーディーパットを沈めたものの、上位争いから離された。心の中は迷いがあった。

 「最後なので楽しんでもいいのか。結果を求めてアンダーパーにこだわるか。そのはざまで揺れていた」

 全英リコー女子オープンのプロアマ戦が開かれた8月1日に、コーチで父の優さん(71)がコース上で倒れ、現在も闘病している。現役最後の姿を、必死に戦う姿を、伝えたかった。

 「親子でコーチをしてもらうのは、うまくいくことは少ない。それでもバランスを保ちながらやれたのは、父のおかげ。見習うことはたくさんありますし、今は感謝の思いしかない」

 09、11年に2度の優勝を味わった愛着のあるエビアンの地。ゴルフを始めた幼少時代には、生まれ育った沖縄の海にめがけてショットの練習を繰り返していた。手に血豆ができて、泣きながら練習をした日もあった。涙にくれた宮里がふと天を仰ぐと、大好きなエビアンは、沖縄と同じ青く澄んだ空だった。【益子浩一】