プロ5年目の永峰咲希(22=ニトリ)が、母の前でうれしいツアー初勝利を挙げた。最終日大混戦の中、17番まで単独首位も、最終18番でパーパットを外しプレーオフへ。10アンダーで並んだ菊地絵理香(29=オンワードホールディングス)との決戦を制した。ともにツアーを回り生活面でサポートする母香奈子さん(46)に、恩返しの勝利となった。

 厳しい顔が笑顔に変わった。プレーオフ18番での2ホール目。菊地のパーパットが外れ、永峰の優勝が決まった。「まずは1番に母親に感謝の気持ちを伝えたい」。表彰式では優勝カップを一緒に掲げた。

 プロ5年目。「優勝争いらしい優勝争いもしたことがなかった」という永峰を未体験の緊張が襲ったのは残り3ホール。1打リードで迎えた最終18番グリーン。8メートルのバーディーパットは「当たった(打った)瞬間に、あっと思った」と2メートルもオーバーし、返しも外して追いつかれた。だが自身の緊張を「新しい発見」ととらえる余裕があった。

 オフに取り組んだ練習の裏付けがあったからだ。たまたまテレビ番組で会った古閑美保さんのアドバイスで、練習内容を見直し、今まで1日に300球程度だったものを倍以上の600~700球打ち込んだ。ぶれなくなったショットとパットに自信を持っていた。

 技術面に加え、体調管理を母香奈子さんがサポートしてくれた。前夜は調理ができるホテルで、ホットプレートを借りてみそ焼き肉。決勝当日は、プレーの合間に食べる梅しそ入りおにぎりを持たせてくれた。プロ転向後から同行している香奈子さんは「今年はゴルフと向き合う姿勢が違った。今日は成長した姿を実感できました」と喜んだ。

 性格は頑固でマイペース。母親が心配して声をかけると「いいから」と、拒否反応を示す。そんな永峰が、地元宮崎で3月に開催されたアクサレディースで予選落ちすると、母親の前で初めて泣いたという。心配をかけた分、その何倍もの恩返しが初勝利という形で実った。

 28日には、23歳の誕生日を迎える。「時間がかかったけど、いい勝ち方ができた。自分への誕生プレゼントになった」と笑った。14年プロテスト合格組では、堀琴音、柏原明日架らを抑えてレギュラーツアー初優勝。今後は、全米女子OP日本地区予選(5月8日、茨城)にも出場予定だ。「早く2勝目。そこしかない」と言いつつ、次の目標もしっかり見据えている。【桝田朗】