ブルックス・ケプカ(28=米国)が6バーディー、2ボギーの66で回り、通算16アンダーの269で17、18年と2連覇した全米オープンに続くメジャー通算3勝目を飾った。大会最多アンダーパー、同最少ストロークを更新する勝利は圧巻だった。

 憧れの2人を振り切った。4、5番で連続ボギーをたたき、タイガー・ウッズ(米国)に1打差まで迫られた。8番グリーン上では大歓声が耳に届いた。「あれが一番大きい歓声だった。どこからかは分からなかったけど、タイガーが9番でバーディーを取ったのかな?」。動じることなく、このホールを含む3連続バーディーで折り返した。

 「僕のチーム以外、コースにいるみんながタイガーを応援していたと思う。それはおかしくない。彼はゴルフ界で最も偉大な選手で、信じられないカムバックをしている」。3週前の全英オープン最終日、ウッズが後半で一時単独首位に立った時の盛り上がりにおぼろげな記憶をよみがえらせたという。「子どもの頃、全英オープンを見にいったんだ。いつだったか…。ベン・カーティスが勝った時(03年)だ」。ウッズに降り注ぐ大歓声は、思い出に刻んだ幼少期と同じく熱狂的だった。

 後半、2人で最終組をプレーしていたアダム・スコット(オーストラリア)に1度は並ばれた。「アダムが勝った(04年)プレーヤーズ選手権を見ていた。彼が池ポチャした時は、僕も同じくらい動揺した。ホントに応援していたからね。彼のスイングが世界一だと思ってきたし、大好きなんだ。実際に会ってみたら、本当にナイスガイでさ」。ウッズも含め、2人とメジャータイトルを争える状況は最高だった。「タイガーを見て、僕らは育った。こんな風にメジャーで戦えるなんて、夢にも思わなかった」と喜びがあふれた。

 15、16番の連続バーディーで大きく勝利を引き寄せた。「重圧にさらされながら打った中では、ベストショットの1つになるだろうね」。そして、決着の最終18番グリーン。20センチほどの短いウイニングパットを“お先”で決めた。「アダムが重要な(パー)パットを残していた。僕のボールマークが視界に入ってしまう。邪魔をしたくなかったんだ」。ゴルファーにとってこれ以上ない歓喜の瞬間まで同伴競技者を思いやる。ケプカもまた“ナイスガイ”だった。

 今大会ドライビングディスタンス2位という世界屈指の飛ばし屋。これで米ツアー4勝のうち3勝がメジャーとなった。過去、全米オープンと全米プロを同一シーズンで勝ったのは、1922年ジーン・サラゼン、1948年ベン・ホーガン、1980年ジャック・ニクラウス、2000年ウッズの4人。いずれも生涯グランドスラムを達成した母国のレジェンドたちに続く快挙を達成した。