完全復活を予感させる“タイガーチャージ”だ。タイガー・ウッズ(42=米国)が8バーディー、2ボギーでこのラウンドベストとなる64をマークし、通算14アンダーの266で優勝したブルックス・ケプカ(28=米国)と2打差の2位に入った。メジャーでの2位フィニッシュは09年全米プロ以来。6位だった全英オープンに続く優勝争いで来季以降のメジャー通算15勝目に大きく期待を膨らませた。

 熱狂の中心でウッズが拳を振り上げた。最終18番、6メートルのバーディーパットをねじ込み、クラブハウスリーダーとして後続を待った。自身メジャー初の逆転Vはならなかったが、間違いなく主役の座を張り「1月の時点では、自分のスケジュールがどうなるかすら分からなかった。毎試合がチャレンジだった。この1年で、ここまで戻ってこられるとは」と感慨に浸った。

 赤いシャツに黒いパンツ。おなじみの勝負服に身を包み、4打差を追って出た。「スイングに苦しんでいた。朝の練習場から右へ左へ飛んで、サンドウエッジでさえうまく打てなかった」。前半はショートホールを除く7ホールで、ティーショットを1度もフェアウエーに置けなかった。それでも3つ伸ばす。14番のボギーで2打差に後退しても諦めない。15番では残り164ヤードからピンそば30センチにつけるスーパーショットでバーディーを奪った。連発した神懸かり的なリカバリー、勝負強いパット、会場の空気を支配していく派手なガッツポーズまでも、全盛期をほうふつとさせた。

 腰の手術を4度も経験。その度に新たなスイングにトライし、戦い続けてきた。過去2シーズンはほとんど試合に出ていなくても「ゴルフは忘れていない」。42歳。変化は多岐にわたる。前週ブリヂストン招待では4月のマスターズに続いてミケルソン(米国)と練習ラウンドを行った。ともに一時代を築き、かつて不仲説を流されたことも。ウッズは「お互いキャリアの終盤に入って、この数年、2人の関係は大きく変わった。ずっと近い存在になった」と話したことがある。

 日々の体調にも神経をとがらせる。前週優勝が難しくなると「この年齢になると、次の日までに回復することも大事になってくる。来週の木曜日(全米プロ第1日)へのエネルギーもためないといけない」。以前は恒例だった早朝からの練習ラウンドも減った。今大会前は、氷風呂につかって体の炎症を抑えるケアも施していた。ベテランならではの戦い方にシフトし、自分に憧れて育った世代と対峙(たいじ)している。

 年頭に656位だった世界ランクは26位まで上がった。「僕はまだプロセスの途中、未知の領域にいる。自分と同じような手術をして打った人は誰もいない。もっと自分をよく知らなければいけない」。完全復活の日は、きっと遠くない。【亀山泰宏】