シーズン最終戦で最高のカムバックを見せた。単独首位から出たタイガー・ウッズ(42=米国)が2バーディー、3ボギーの71とスコアを落としながら、通算11アンダーの269で逃げ切った。第1日からトップを譲らない完全優勝で13年ブリヂストン招待以来1876日ぶりのツアー通算80勝目。サム・スニード(米国)の史上最多82勝、さらにはあと4勝と迫ったジャック・ニクラウス(米国)のメジャー通算18勝という2つの大記録への道筋に再び光が差した。

最終18番でリードは2打、ティーショットをフェアウエーに置いた時点で歓喜のシナリオは完結同然だった。その瞬間を待ち切れない大ギャラリーが、警備の制止を振り切ってウッズが歩いた後のフェアウエーになだれ込む。「後ろを振り返ったら、人で埋まっていた」。異様な雰囲気と「タイガーコール」に包まれながら、両手を突き上げ、ガールフレンドのエリカ・ハーマンさんとキスを交わした。

「79勝で5年間止まっていた。今年の初めはとてもじゃないが、そんな(今季中に勝つ)ことは無理だと思っていた。信じられない。泣きだしそうだよ」。感傷的な言葉に一切ウソはない。昨年4月、マスターズのチャンピオンズディナーで「もう僕は終わりだ。2度とプレーしないと思う」と漏らしたという。「体がガタガタだった。歩くことも座ることも、痛みなしではできない。僕の人生はどうなるんだろうと思った」。前例の少ない「フュージョン(椎体間固定術)」という手法に望みを託し、4度目となる腰の手術に踏み切ったのも4月。5月にはアルコールか薬物の影響下で車を運転した容疑で逮捕された。9月に公の場に姿を現した時には、現役引退の可能性を否定することができなかった。

「彼らが覚えているような年齢で優勝はしていないから。だから彼らにとって、この勝利はこれまでと違うと思う」。不屈のスーパースターを支えたのは、2人の子どもの存在だった。腰にメスを入れるたび、新たなスイングにトライしてきた。さらにはシーズン途中にスイッチして2週前から戻したエースパター。メジャー14勝のうち13勝を挙げ、ともに歴史を紡いできた栄光のスコッティキャメロンは、完全復活への最後のピースだった。

実戦復帰前の昨年11月時点で1199位だった世界ランクは13位まで上昇。「サム(スニード)はまだ僕の上にいるけれど、僕がプレーを続けていれば、いつか抜けるかもしれない」。新たな偉業にロックオンした。