勝みなみ(20=明治安田生命)が、プロ転向後初のツアー優勝を飾った。首位から出て7バーディー、ボギーなしの65で回り、通算20アンダーの268。第3ラウンド(R)を終えて首位に4人が並ぶ大混戦を制した。鹿児島高1年の14年4月に、アマチュアとして15歳293日で史上最年少のツアー優勝を達成。黄金世代の象徴が、苦労の末にプロ40戦目で初勝利、通算2勝目を手にした。アン・ソンジュ(韓国)の4年ぶり4度目の賞金女王も決まった。
これまで幾度となく涙を流してきたからこそ、プロ初勝利の瞬間は、勝らしい笑顔だった。18番グリーン横で新垣ら黄金世代の仲間が待っていた。祝福の嵐、鳴りやまない拍手。15歳でアマチュア優勝を飾った少女は、4年半が過ぎて大人になった。前日まで4人が首位に並ぶ大混戦。出だしの1番で2メートル、2番で1メートルのバーディーパットを決めて頭一つリードし、最後は2位に4打差の完勝だった。
「泣きたかったけど、泣けなかった。すごく楽しかったから。うれし泣きもいいけど、笑顔もいい。取り乱しちゃうかと思ったけど、意外と冷静でした」
人知れず流した涙がある。今季はプロ初優勝を期待されながら新垣、大里らに先を越された。8月のニトリレディースから9戦で予選落ち7回、棄権1回。不振に陥り9月に腰痛を発症すると、明るい勝が控室の隅で泣いた。母久美さん(51)は「苦しかった。練習が足りないのか。させすぎなのか。私が練習の計画を立てているから、自分を責め続けていました」。苦悩を知るからこそこの日、12ホールを終えて2位に4打差をつけると、母はこらえ切れずコースの横で1人、涙した。
母と二人三脚で歩んだ道だった。鹿児島県内で小学校の教師をしていた母からは学業との両立を求められた。中2の時、夢を尋ねられると「プロゴルファーになりたい」と真剣に答えた。その覚悟を知った母は1年悩んだ末に退職。以降、いつも支えられてきた。
「お母さん泣いたんですか? ウケる。でもうれしい。私はゾーンに入ると左上から自分が見える。(15歳の)熊本で優勝した時がそうでした。でも、今日は見えなかった。見えたらもっと(上に)行くのかな」
賞金ランク11位で初シードを獲得。次週はツアー最終戦。もっと強い「みなみ」を見せる。【益子浩一】
◆勝(かつ)みなみ 1998年(平10)7月1日、鹿児島市生まれ。名前は人気漫画「タッチ」のヒロイン浅倉南から。ゴルフは6歳で始める。12、13年に全国中学生選手権で2連覇。鹿児島高進学前の14年にニュージーランドアマ選手権で日本人初優勝、進学後の同年4月にツアー優勝。翌15年の日本女子アマ優勝、日本女子オープンローアマ獲得。昨夏にプロテスト合格。157センチ、56キロ。