黄金世代の渋野日向子(20=RSK山陽放送)が、大激戦を制し、日本勢では男女を通じ42年ぶりのメジャー優勝の快挙を達成した。日本勢では男女を通じ、77年全米女子プロを制した樋口久子(現LPGA顧問)以来2人目のメジャー優勝。2度目の挑戦で昨夏のプロテストに合格してから、ちょうど1年。米国女子ゴルフ協会が「笑顔のシンデレラ」と名付けた無名の新星は実は泣き虫。その素顔を紹介する。

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クラブハウスの片隅で、彼女はしくしく泣いていた。6月中旬、ツアー会場でのことだった。

国内でも無名の存在ながら、5月のワールド・サロンパス杯で初優勝。常に笑顔を絶やさない姿が一躍、注目された。だがプロ初勝利を飾ってからも、満足なプレーができなければ隠れて泣いた。今大会の快進撃で「笑顔のシンデレラ」と呼ばれるまでになったが、流した涙は数え切れない。苦労を重ね、努力ではい上がってきた。

「うまくいかなくて、悔しくて…。みんなに置いて行かれてしまう気がするんです。でもどんなにうまくいかなくても、笑っていないといけないと思う。なかなか難しいですけどね」

最も遅れてきた黄金世代の選手だった。同じ98年度生まれは、アマチュア時代の15歳でツアー優勝した勝みなみを筆頭に畑岡奈紗、新垣比菜、大里桃子が昨年までにレギュラーツアーで優勝。渋野と同じ下部ツアーが主戦場だった河本結は、4勝を挙げて力を付けた。どんどん成長する同世代に必死に付いて行こうとしたが、昨年9月以降は下部ツアーでさえ全5試合で1桁順位が1度もなかった。

特に2年前の夏は、どん底にいた。初挑戦のプロテストは、第3ラウンドまで通算14オーバーの97位。最終日に進むことすら許されず、振り返れば最下位はすぐそこにあった。プロになる夢を、諦めようとした。悩んでいた時、1人の選手が目に入った。

「先輩の大出瑞月さんがずっと、パットの練習をしていた。それくらいやらないと、うまくはならないんだと、気づかされました。うまくなりたかった」

1年後のプロテストに合格。2年が過ぎた今、初の海外試合として挑んだ舞台が今回のメジャーだった。単独首位で迎えた最終日は、これまで歩んだゴルフ人生のように、苦難の連続だった。V争いから脱落しかけても、諦めず、食らいつき、最終18番で歓喜の瞬間が待っていた。

流した涙が、やっと報われた。【益子浩一】