全英女子オープン覇者の渋野日向子(21=RSK山陽放送)が、惜しくも史上最年少での賞金女王を逃した。 最後まで優勝争いを繰り広げながら、2位に終わった。 優勝は67で回り、通算11アンダーのペ・ソンウ(韓国)。2位に同7アンダーの渋野と、プロ転向したばかりの古江彩佳が入った。 同6アンダーの6位に黄金世代の河本結。 首位から出たイ・ボミと鈴木愛は5位。前週まで賞金ランク2位だった申ジエは7位に終わった。 賞金女王は2年ぶりに鈴木愛が輝いた。

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首位と2打差3位から出た最終日、伸ばしきれない展開が続き、一時は女王を争う鈴木愛(25)に並ばれた。

だが渋野も意地を見せる。12番パー3、13番パー5で2連続バーディーを奪い同7アンダーとする。首位ペ・ソンウ(韓国)に2打差2位に迫り、残すは4ホールとなった。

この時点で、鈴木は同5アンダーでホールアウトし、優勝の可能性が消滅。渋野は逆転優勝するだけだった。

しかし、勝負どころの15番パー4で、渋野は痛恨のボギー。18番パー4でバーディーを奪ったが、結局、3バーディー、1ボギーの70で回り、通算7アンダー。残り4ホールまで首位に迫りながら、あと1歩届かなかった。

結局、渋野は2位タイだった。

前日30日の第3ラウンド後、2連続ボギーでホールアウトした自分のプレーを「50点」と評した。

その一方で「明日は本当に悔いのない、今日みたいなゴルフをしないように心がけたい。出だしからパットがショートするゴルフをせず、ピンを狙っていくゴルフをしたいと思います」と話した。

賞金女王への欲は「ない」と封印しつつ、優勝については「それが1番の恩返しになると思います」と隠さなかった。

恩返し。それが、77年全米女子プロの樋口久子以来42年ぶりにメジャー、全英女子オープンを制した21歳の心意気だった。

全国が“しぶこフィーバー”で過熱する中、2週前の伊藤園レディースで、3月アクサレディース以来となる今季2度目の予選落ちを喫した。わずか1打差で決勝ラウンドに進めず、泣きながら「私に賞金女王を口にする資格はありません」と“終戦”を宣言した。

勝みなみ、畑岡奈紗と同じ“黄金世代”とはいえ、昨年プロテストに合格した時は全くの無名。それが5月の国内メジャー・サロンパスカップで初優勝を飾り、全英女子オープンにも勝ち、瞬く間にスターになった。「スマイル・シンデレラ」と注目を集めた。未体験の重圧をはねのけ、ツアーを引っ張ってきた。

予選落ち後、後援会のファンに「今まで予選を通ってくれてありがとう」と言われた。青木コーチには「どうせ落ちるなら、もっとたたけよ」といじられた。孤独ではないと気づいた。

「私を支えてくれる人、コーチ、キャディーさん、ファンの方々のために頑張ろうと思うようになりました」。消えかけた心に、火が付いた。

再出発となった先週の大王製紙エリエールで今季国内ツアー4勝目。賞金女王は「考えていません」と言うが、約2431万円あった鈴木との差が約1511万円まで接近。自力奪取こそ無理だが「単独2位以上」で戴冠の可能性がある状態で、最終戦を迎えていた。

ドラマは最高の結末ではなかった。それでも、この1年、無名のツアールーキーが巻き起こした旋風は、日本女子ゴルフ界に確かな足跡として刻まれる。