ゴルフのAIG全英女子オープンは20日、男子メジャーの全英オープンを過去9度行ったスコットランドの名門、ロイヤルトルーンGCで開幕した。フィギュアスケートで10年バンクーバー五輪銅メダル、世界選手権優勝と日本男子初の功績を残した高橋大輔(34=関大KFSC)は、同じ岡山出身で連覇を狙う渋野日向子(21)にエールを送った。今年からアイスダンスに転向したが、春は新型コロナウイルスの影響に直面。現役アスリートの目線で「喜びの爆発」を願った。

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競技こそ違うが、世界の頂に立つ難しさを知っている。その喜びを知っている。渋野が目指す全英2連覇。その道筋の険しさを想像しながら、高橋は思いを込めた。

「ご自身の描くプレーが1つでも多くできることを、同郷の人間として願っています」

生まれ故郷の岡山・倉敷市は、渋野が育った岡山市に隣接している。8歳となる誕生日の直前にスケートを始め「ここでスタートしていなかったら、長くできていなかった。好きという思いを作ってくれた場所」と口にしてきた。一方、渋野も昨年12月に故郷へ戻った際に「やっぱり岡山が一番キヨキヨ(清々)です」とニッコリ。直接の面識はないが、渋野が活躍する様子を高橋も耳にしてきた。

「コロナの影響で大会中止が続き、ご自身が思い描くトレーニングや、感覚の維持が本当に難しいことと思います」

渋野は今大会直前のスコットランド女子オープンでカットラインに9打届かず、自己ワーストの予選落ち。春からコロナ禍で国内大会の中止が相次ぎ、無観客開催には「ギャラリーさんがいてくれた方が、良い意味で調子に乗る」と本音を漏らした。今年からアイスダンスに取り組む高橋も、春は拠点の米フロリダから一時帰国。今後も大会等の不確定要素が多い中、準備を進めている。「全英も無観客試合と聞きました」と切り出すと、渋野へシンプルなエールを投げかけた。

「いつもと違う環境、2連覇のプレッシャーが懸かることもあると思いますが、『ゴルフができる喜び』を爆発させてほしいです」

10年前、高橋が日本男子初優勝を飾った世界選手権。1カ月前のバンクーバー五輪メダリストとして、期待と重圧を背負った。「思い切り、楽しんで滑る」。その思いを体現した先に頂があった。同郷の後輩による挑戦を、米国からそっと見守っている。【松本航】

◆高橋大輔(たかはし・だいすけ)1986年(昭61)3月16日、岡山・倉敷市生まれ。倉敷翠松高、関大と進み、06年トリノ大会から五輪3大会連続出場。14年に引退したが、18年に現役復帰。20年から村元哉中(かな)とカップルを組み、アイスダンスで22年北京五輪を狙う。165センチ。