<男子ゴルフ:バナH杯KBCオーガスタ>◇最終日◇8月31日◇福岡・芥屋GC(7173ヤード、パー72)◇賞金総額1億円(優勝2000万円)
プロ5年目の甲斐慎太郎(27=フリー)が、涙のツアー初優勝を飾った。首位スタートから3バーディー、ボギーなしの69で回り、通算10アンダーの278で、2位星野英正(30)を1打差で振り切った。03年日本アマ王者が、高校時代を過ごした福岡でようやく素質開花。今月中旬に智香夫人(24)が第1子を出産予定で、うれしい「パパ直前V」となった。
緊張感から解放されると、甲斐の目に熱い涙がこみあげてきた。「正直、今日1日すごく長くて、長くて、長くて、長くて。やっとたどり着きました」。念願のツアー初優勝に、体も声も震えていた。
父になる責任感が、重圧を押しのけた。智香夫人の第1子出産予定日は9月18日。「父親というのは偉大な存在と思っているので、自分もそうなりたいと思って頑張った」。首位から出て、一時は宮里優に逆転されたが、9番で6メートルを沈めてバーディーを奪い、12、13番でも連続バーディーとし、逃げ切った。
14歳だった13年前、ゴルフを厳しく教えてくれたのが父稔さん(56)だった。「風が強かった」と言い訳すれば、「みんな一緒だ」とすかさず鉄拳が飛んできた。練習場からの帰り道の途中で車から降ろされ、5キロ近く走って帰ったこともある。「でも、今は友達みたい。大好きだから」と甲斐。自分が父になる年になり、偉大さが分かった。その父も見守る前でつかんだ栄冠だった。
03年日本アマ王者も、シード権を取れないままプロ5年目を迎え、「今年だめならプロをやめよう」と背水の覚悟だった。日体大の先輩・室田に「いいゴルフをしようとせず、自分の力を出すことだけ考えろ」と諭されたのが4月。その言葉が効いて5月の北京オープン2位。7月全英オープンにも出場した。この日、17番ではグリーンエッジからパターを使ってパー。「恥ずかしさもあったけど、自分のゴルフをしようと思った」。かっこ良さではなく、自分らしさを貫いた。
高校時代を過ごした福岡で素質開花。偶然にも沖学園時代の同期、北田と同日Vも実現した。「遼クンにはなれないけど、僕のできることをして、ゴルフ好きが増えてくれればいい」。男子ゴルフ界待望の20代の新星が誕生した。【木村有三】

