<男子ゴルフ:マイナビABC選手権>◇最終目◇2日◇兵庫・ABCGC(7217ヤード、パー72)◇賞金総額1億5000万円◇観衆1万2937人
攻めて、勝って、泣いた !
石川遼(17=パナソニック)が、プロ転向後初のツアー制覇を果たした。首位深堀圭一郎(40)に3打差3位からスタートし、69で回って通算9アンダーの279で逆転勝ち。最終18番パー5は、2打リードの状況から果敢に2オンを狙い、ウオーターショットからパーセーブ。「実は優勝を狙ってました」とまで口にした。アマチュアだった「15歳8カ月」のツアー最年少Vから、わずか1年5カ月。すごみを増した天才少年は、今回は「17歳1カ月」のプロでの最年少V記録を樹立した。
激しい水しぶきを残し、石川の夢が舞い上がった。最終18番パー5、ビーチバンカーからのウオーターショットはピン左3メートルへ。土壇場の劇的リカバリーで、プロとして初のツアー制覇を引き寄せた。「高校生プロ」はギャラリーの大歓声に泣きじゃくった。
石川
もう、誰かに助けてほしいなと思うほど、苦しいゴルフで…。ほんと途中で泣きそうになったんですけど、我慢すれば必ず最後でいいことが待っていると。そう信じてプレーしました。本当に幸せです。
魅せて、攻める「17歳の天才」らしい最終ホールだった。深堀を2打リードして首位。第1打はつま先下がりとなる急斜面の左ラフにつかまった。第2打は池の手前に刻み、確実にパーを拾う-。それがこれまでのプロの「定石」だ。しかも深堀は第1打を木の根元に打ち込み、3オンしか狙えない状況だ。
「刻む?
狙う?」。自分に問いかけた。返事は「刻まないでしょ」。
石川
タイガーだったらどうするか分からないけど「石川遼」は狙っていきました。負けてたら「バカなことしたな」と言われたと思う。でも、あれはあれで良かったです。
無謀にも映った第2打はグリーンに届かず、ビーチバンカーに転がり落ちた。球が上部だけ水面から出ていた。ここでも果敢にサンドウエッジを打ち込んだ。「あんなにうまく打てるとは」。自画自賛のスーパーショットから、2パットで勝利をつかんだ。
期待にも、重圧にも負けなかった。1月にプロ転向し、有名企業と計20億円以上の契約をした。ツアー競技外の8月関西オープンで優勝も、9月ANAオープン以降は自分のスポンサー大会で3週連続予選落ち。「ツアーでやる資格があるのか」と悩んだ。
ファンの声援が支えだった。「こんなゴルフで納得するわけないのに、なんでこんなに応援してくれるんだろう」。クラブを振らずにいられなかった。毎朝2時間半以上前にコース入りし、スタートまで2度、練習場に通う。1度目で体をほぐす。2度目で本番に備える。片山を見習って、体のバランスを整える左打ちの素振りを始めた。谷口徹を見て、パットのタッチを盗んだ。
「実を言うと優勝を狙ってプレーしていたので、優勝できて良かったです」と明かした。ホールアウト後に、深堀からもらった「これは実力だから。自信を持ちなさい」という言葉が心に染みた。獲得賞金は7200万円を超え、賞金ランク6位に浮上。最終戦の日本シリーズ出場権も獲得し、残り5試合で1億円突破も見えた。アマで1勝、プロでも1勝。それは通過点だ。目標のマスターズへ、石川は走り続ける。【木村有三】

