<米男子ゴルフ:全英オープン>◇最終日◇19日◇英・ターンベリー(7204ヤード、パー70)

 【ターンベリー=木村有三】メジャー&世界主要ツアー最年長Vに王手をかけていたトム・ワトソン(59=米国)が、歴史的快挙を逃した。最終ホールを1打リードの首位で迎えながら痛恨のボギーで72。通算2アンダー、278で並んだスチュワート・シンク(36=米国)との4ホールのプレーオフに臨み、4オーバーと力尽きた。それでも、不屈の男は60歳で迎える来年の大会で再び優勝を狙うと宣言した。

 長い戦いを終え、ヒラリー夫人と肩を組んで引き揚げてきた59歳の顔に、切なさがにじんだ。ワトソンの心情を想像し、静まり返った記者会見場に現れたワトソンは、「ここは、葬式じゃないだろ?」と自ら切り出して苦笑いした。

 ワトソン

 もう少しで夢がかないそうだったのに、残念で仕方ない。地獄のようなストーリーだったけど、これは素晴らしい失望でもあるんだ。やるか、やられるかの世界。勝つのは、簡単じゃないんだ。

 歴史的勝利を逃しながらにこやかに話す姿が、逆に痛々しかった。

 メジャー&世界最年長優勝は、確かに手の届く場所にあった。最終日を単独首位でスタート。序盤の1、3番でボギーをたたく苦しい展開を11番で10メートルのバーディーパットを沈めて吹き飛ばした。勝負どころの17番パー5ではグリーン奥からパターで寄せてバーディー。だが、1打リードで迎えた最終18番が誤算だった。残り170ヤードの第2打はピンにまっすぐ向かったが、フォローの風に乗り、硬さを増したグリーンでも跳ねて止まらず、奥にこぼれた。1メートルほどの傾斜越えのアプローチは、パターで3メートルオーバー。「入れたら勝ち」のパーパットも、打ち切れずに右に外した。

 ワトソン

 あと少し、最終ホールをうまくプレーしていれば、プレーオフに行かずにすんだのに。(第2打は)8番アイアンじゃなく、9番だったね。

 シンクとのプレーオフでは、59歳の心と体に余力は残っていなかった。1ホール目の5番ではアゴの深いバンカーにつかまり、3ホール目の17番では深いラフから球が出ない。4ホールで4オーバーと崩れ、23歳下のシンクに勝利を譲った。「自分では体力の限界とは思わなかったが、きっとそう見えただろう」。全英では過去5勝をあげ、こよなく愛していたリンクスのわなにはまりスコアを崩す姿は、まさに悲劇だった。

 77年にニクラウスとの死闘を制したターンベリーで、再び女神はほほえまなかった。だが、世界王者ウッズが予選落ちし、ミケルソンも欠場した大会を最後まで盛り上げた記憶は、永遠にファンの心に残る。しかし、それで満足はしていない。ワトソンは早くも来年の大会に目を向けていた。

 ワトソン

 来年のセントアンドルーズも十分戦える。そのショットが、まだ僕にはある。

 60歳で迎える来年は、出場資格を持つ最後の全英オープンになる見込みだったが、ワトソンの活躍で「定年」引き上げの動きも出てきた。夢は聖地へ、その先へと続いていく。