<男子ゴルフ:とおとうみ浜松オープン>◇最終日◇22日◇静岡・グランディ浜名湖(7028ヤード、パー72)◇賞金総額1億円(優勝2000万円)

 プロ14年目の小林正則(35=フリー)が、石川遼(19)とのプレーオフを制してツアー初優勝を飾った。通算20アンダー268で並んだ石川とのプレーオフでは、2ホール目でバーディーを決め、バーディーパットを外した石川を振り切った。ショットイップスに悩み、05年から3年間は獲得賞金ゼロとどん底のプロ生活を耐えてきた35歳の苦労人が、19歳の国民的スターを破り、優勝賞金2000万円を獲得した。

 大きなため息が「人生大逆転」のチャンスを呼び込んだ。プレーオフ2ホール目。石川の1・5メートルのバーディーパットがカップに蹴られる。ギャラリーのざわめきの中、小林は落ち着いて50センチのバーディーパットを沈めた。プロ14年目で悲願の頂点。「勝ちたいと思ったけど、まさか勝てるとは。夢みたいです」。すぐには実感もわかず、喜びの涙すら出なかった。

 3打差2位で迎えた最終日。2番からの3連続バーディーで大混戦から抜け出した。終盤は石川と一騎打ちの展開。14番で2打差をつけるも、19歳の猛追を受け、プレーオフに持ち込まれた。「相手は遼だし、優勝はないと思った。でもこんなチャンスはないと気持ちを入れ替えた」。14年間で獲得賞金約7700万円の35歳が、プロ4年目で4億5000万円以上を稼ぎ出す19歳のスターを、計20ホール目で振り切った。

 日大時代から186センチの長身を生かした飛距離には定評があった。プロ初年度の99年は1000万円以上の賞金を獲得。だが、04年シード落ちすると、その後はショットイップスに悩まされた。思うようにスイングができず、球は左右に曲がる。05年から3年間は賞金額ゼロ。華やかなプロ生活とは無縁の日々が続いた。

 独身を貫き、千葉・長生村の実家で両親とともに暮らし、親の援助も受けながら、近くのゴルフ場で練習をさせてもらった。ミズノからの契約金と貯金を切り崩す毎日。「ボロボロでした。ゴルフをやってもいいのかな。情けない」と悩み抜いた。支えは同じミズノと契約を結ぶ水巻善典(52)。電話などで「自分を追い込むな。楽しくやれよ」と常に励まされた。「あの人がいなかったら、心は折れていた」。前週日本プロ・日清カップでプロ16年目の河井が優勝したことも「頑張っていればチャンスは来る」と勇気をもらった。

 賞金ランクは7位に浮上し、今後の目標は同ランク2位以内の選手らが得られる全英オープン(7月14日開幕)出場。「親孝行したいですね。世話になりましたから」。もっとも優勝賞金2000万円については「そんなお金は持ったことがないので買いたいものも思いつかない。まずはうまいビールが飲みたい」。プロ14年目の1勝。夢は大きく広がった。【田口潤】