<女子ゴルフ:スタンレーレディス>◇最終日◇17日◇静岡・東名CC(6500ヤード、パー72)◇賞金総額9000万円(優勝1620万円)

 有村智恵(23=日本ヒューレット・パッカード)が7バーディー、2ボギーの67で回り、通算15アンダー201で今季初、ツアー通算8勝目を挙げた。初日に「3万年に1度」の確率といわれるアルバトロスとホールインワンを同時達成すると、そのまま首位を譲らず完全優勝。今週は東北高のOGとして宮城・石巻を慰問する。被災地にささげる約1年3カ月ぶりの優勝に喜びの涙を流した。

 「3万年に1度の奇跡」を無駄にはしなかった。初日にアルバトロスとホールインワンを決めた有村は初日から首位を譲らず、2位に3打差をつける圧勝で大会を締めた。「初日の奇跡を、いい思い出にするために頑張った。忘れられない3日間になった」。優勝インタビューの最後に、我慢していた涙を流した。

 スタート直後に、8連続バーディーの諸見里が首位浮上も焦らない。「(諸見里が)残りのハーフで8、9アンダーは伸ばせない」と自分のプレーに集中。3番の第1打では、あと球1個分でOBになるほど左に曲げたが、ナイスパーで切り抜ける。すると4番から5連続バーディーで一気に独走態勢を固めた。「ほとんど1メートル前後につけることができた。今日も神懸かっていた」と最後までゴルフの神様を味方につけた。

 昨年4月のスタジオアリス女子オープン以来、優勝から遠ざかった。今季も米ツアーを含めて2位2回と勝ちきれない。仙台市の東北高出身。今年に懸ける思いは強いだけに、もどかしく「もう勝てない」との不安も募った。弱気の虫を取り除いたのは、5月の被災地慰問だった。

 宮城県南部の山元町を訪ね、多数のゴルフファンと触れ合った。「ゴルフをできない人たちはテレビ中継を楽しみにしてた。自分はファンの代表として戦っている」とプロの役割を再確認した。

 22日から宮城・石巻市の避難所に東北高OGとともに訪問することも決まっていた。「どんな状況でも、今週は優勝する」。そんな強い決意は初日の「3万年に1度の奇跡」から最終日の今季初優勝までの神懸かりの3日間につながった。「東北のみなさんにいい報告ができるのでとても楽しみ。頑張っていれば、たまに神様がご褒美をくれる。そんなことをみなさんが感じてくれれば」と優勝の喜びに、復興への思いを重ねた。【田口潤】