<米女子ゴルフ:エビアン・マスターズ>◇最終日◇24日◇フランス、エビアン・マスターズGC(6345ヤード、パー72)

 宮里藍(26=サントリー)が、今季初優勝を飾った。首位スタートから70で回り、通算15アンダーで逃げ切った。3月の東日本大震災に心を痛め調子を落としたが、2年前に米ツアー初Vを果たした地で復活。昨年8月以来の米通算7勝目で生涯獲得賞金は日本人で初めて500万ドル(約4億円)を突破。岡本綾子に続き、日本人2人目の米ツアー3年連続勝利も達成した。

 強い宮里藍が、帰ってきた。今季10戦目で初勝利。大歓声の18番グリーンでは万歳した。ゴルフ界の「なでしこ」の笑顔が輝いた。

 「何回勝ってもうれしい。いろいろある中で、やっと1勝できた。ここまで頑張ってきて良かった」。

 首位スタートの最終日、序盤から攻めた。3番で4メートル、6番では第2打を80センチにつけ、8番では5メートルを読み切った。前半だけで3バーディー。だが一時は4打差までリードを広げながら、12番のボギーで1打差に。それでも、焦らない。13番パー4。5メートルのバーディーパットをねじ込んだ。

 米ツアーでは日本人で初めて生涯獲得賞金500万ドルを突破した。岡本綾子以来2人目の3年連続勝利も達成。直前に、女子サッカーW杯で優勝した「なでしこジャパン」に勇気をもらった。珍しく大興奮し、自身のブログで「すごすぎる!

 涙が止まらないよー」と記した。「私もあきらめないで、長い目でチャレンジを続ける」。そう誓った直後に栄冠を射止めた。

 3月11日、東北高時代に暮らした仙台を東日本大震災が襲った。宮里はちょうど、沖縄から羽田空港へ移動中だった。到着後、都内のホテルへ向かうが大渋滞で車が動かない。5時間以上も閉じこめられた車内で、知人から連絡をもらって大惨事を知った。

 転戦仲間の宮里美香や上田らを誘って「まけるな日本」をスローガンに募金活動を開始。石川遼にも相談の電話を入れたほどだった。個人的にも2000万円の義援金を送った。だが「被災者のために頑張りたい」という強い気持ちが、技術面でも裏目に出た。「いいニュースを届けたいという気持ちが、自分らしいプレーの妨げになっていた」。焦りはテンポの乱れや、判断のミスを招いた。心が落ち着いたのは、2週前の全米女子オープン。「自分ひとりで何とかしようとしても無理」と、肩の力を抜いた。それでも、この日は優勝後のスピーチで感極まった。「日本が大変な時に、いい瞬間を過ごせてありがとうと言いたい。日本のみなさん、手を取り合って頑張りましょう」と涙で訴えた。

 最高峰の米ツアーには個性的な選手がそろう。宮里がラウンド中に話し掛けても、顔をしかめて「WHAT?(はあ)」と言い返すプロもいる。宮里は嫌な顔をせず「そこが彼女の良いところ」とケロリと話す。厳しい世界で、たくましく生きるすべを備えた。次の照準はメジャー制覇。28日開幕の全英リコー女子オープンへ、最高の弾みをつけた。【塩畑大輔】