<男子ゴルフ:ANAオープン>◇2日目◇16日◇北海道・札幌GC輪厚C(7063ヤード、パー72)◇賞金総額1億1000万円(優勝2200万円)

 16歳がトップで予選通過を果たした。伊藤誠道(杉並学院高1年)が6バーディー、ノーボギーの66をマーク。2日連続ノーボギーで、通算9アンダー135の単独首位に立った。アマ選手の単独首位は、07年マンシングウェアオープンKSB杯の石川遼(当時高校1年)以来。この大会で優勝を果たした高校の先輩に追いつくべく、決勝ラウンドでもマイペースを貫く。

 グリーン上での堂々たる振る舞いは、とても16歳にはみえなかった。最終9番パー5。伊藤は1・5メートルのバーディーパットを、構えに入るやいなや、迷わずあっさり打った。ど真ん中からカップインさせると、にんまりと笑い、キャディーとグータッチ。「いやあ、今日もうまくいった!」。そう声を上げると、肩で風を切るようにして、スコア申告に向かった。

 高校入学直後であることを考慮し、5月のとおとうみ浜松オープン以来、ツアー戦出場を控えていた。プロに交じっての久々のプレーにも、おじけづいたところはまったくなかった。石川のツアー初優勝以来となる、高校生アマの単独首位。2日間ノーボギーは、その石川もアマ時代は成し遂げていない快挙だ。

 怖いもの知らずの攻撃的なプレーに、大人っぽい戦術眼が加わった。もともとはどこからでもピンを直接狙うスタイル。転機はメンタルトレーナーの指導を受けた、8月のブリヂストン社主催の合宿だった。元プロゴルファーの父一誠さんは「あれから熱くならず、冷静に刻んでパーセーブできるようになった。今まではプロの試合となれば、意気込みが強すぎるほどだったけど、最近は『普通にやってくるよ』と自然体でコースに出て行くようにもなりました」と語る。

 この日も精神面の成長が見て取れた。風が強まるとみるや「ボギーを打たないように、安全にプレーしよう」とセルフコントロール。9番も「ティーショットから刻もうと決めていた」と飛距離をいかした2オンを封印し、バーディーをもぎ取った。

 完璧な予選ラウンド。石川に次ぐ高校生Vへの期待も高まる。「優勝争いの実感は全然ないです。背伸びせず、コツコツと。またノーボギーで、伊藤誠道のゴルフをしたい」。自分のプレーさえできれば、いい勝負はできる-。コメントの行間に、わずかに自信をにじませた。【塩畑大輔】