<女子ゴルフ:ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン>◇初日◇23日◇宮城・利府GC(6550ヤード、パー72)◇賞金総額7000万円(優勝1260万円)

 宮里藍が、有村が、東北でプレーできる喜びをかみしめた。東日本大震災から196日。東北唯一のプロトーナメント、ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンが23日、初日を迎えた。会場の宮城・利府GCは18番グリーンが陥没するなど甚大な被害を受け、震災当初は開催も危ぶまれた。だが、8年前に最年少18歳101日で大会を制した宮里藍(26)らの激励を受けたスタッフらの懸命の努力で、例年通りの開幕にこぎつけた。宮里美香(21)不動裕理(34)ら3人が68で回り4アンダーで首位に並んだ。宮里藍は1オーバー73の40位で初日を終えた。

 深い緑に統一されたフェアウエー、短く刈りそろえられた芝のグリーン…。利府GCに約半年前の大惨事のツメ跡はなかった。初日を終えた宮里藍は「無事に大会が開催されて、本当にありがたかった」と、しみじみと初日を振り返った。まだ高校3年だった8年前、史上最年少18歳101日で優勝した。その思い出深いコースで再びプレーできたことがうれしかった。

 宮里

 今の私があるのは、このコースがあってこそ。他のトーナメントより、思い入れはあります。

 その原点のコースが、大震災で壊滅的な被害を受けた。最年少優勝を決めた思い出の18番グリーンは左半分が陥没。コース内の傾斜地、カート道なども崩壊した。コースを管理するグリーンキーパーの鈴木誠司氏(44)はあまりの惨状に「修復できるかな」と絶望的な気持ちになったという。親類が行方不明になった人も含めて、約55人の従業員総出で作業が続いた。

 修復のめどが見えてきた4月7日、震度6強の余震に襲われ、18番グリーンは再び沈下。コース各所の被害も拡大した。だが、支配人の山地光氏(55)は「うちでやらずして、どこでやるんだ。誰も中止を考えたことはなかった」。専門業者の力も借り、グリーン下の土を70センチも掘り返す大工事を敢行。自動散水機が震災で壊れ、従業員が朝5時からホースで芝に水を巻いた。修繕費用は年間の営業利益を超える数千万円に及んだ。

 コースにゆかりある選手からの励ましが支えになった。宮里と同じ東北高出身で09年大会覇者の有村智恵(23)が5月に訪れ、従業員を激励した。宮里は有村、原江里菜(23)と東北高校の後輩とともに「いつも仙台を思っています」のメッセージ付きのサインを送った。同コースは7月1日、約4カ月ぶりに一般営業の再開までこぎつけた。

 開幕前日22日には台風15号の影響で、3番ホールで土砂崩れが起きた。大雨でグリーンには水があふれ、バンカーも崩れた。最後の試練にも、従業員たちはほぼ徹夜状態で、完璧なコースを造りあげた。

 宮里

 (同組だった横峯)さくらと“コースコンディションが良すぎるね”と話してました。震災、台風もあって、コース管理の方は大変な思いをされたと思いますが、そのおかげで何の問題もなくプレーすることができました。

 「ここまでやることがいっぱいあったので早かった。被災した人たちがテレビを見て“ゴルフをしたいな”と思ってくれれば」と山地支配人。東北にゴルフが戻ってきた。【田口潤】