<女子ゴルフ:富士通レディース>◇最終日◇16日◇千葉・東急セブンハンドレッドC西C(6635ヤード、パー72)◇賞金総額8000万円(優勝1440万円)

 藤田幸希(25=TOSHIN)が5バーディー、3ボギーの70で回り、通算7アンダー209で、今季初、ツアー通算5勝目を飾った。2週前の日本女子オープン最終日に右肩、腕のケガで棄権。私生活に支障をきたすほどの痛みが続いたが、日々のマッサージでしのいだ。終盤は石川遼のように闘志を前面に出し、賞金ランク1位アン・ソンジュ(韓国)との一騎打ちを制した。

 右の拳を力強く、3回振った。前の組のアンに初めて逆転を許した15番パー4。藤田は7メートルのバーディーパットをねじ込むと、自然と派手なガッツポーズを繰り出した。「ちょっと遼クンみたいでしたね。気持ちが入ると、ああなるんですね」。気力でもぎとった今季初優勝だった。

 樋口久子以来、34年ぶりの連覇がかかった9月日本女子プロ選手権最終日は79と大崩れで号泣した。2週前の日本女子オープン最終日のハーフターンでは、クラブが持てないどころか、息もできないほどの右肩、腕の痛みが発症。上位争いしていたが棄権した。疲労の蓄積による筋肉の硬化が原因で、シャワーで頭を洗えないほどの痛みだった。

 前週は試合を休んで、栃木・奥日光の温泉で治療に努めた。医者から勧められた五十肩用のストレッチにも取り組んだ。身も心もボロボロのとき、コーチの父健さん(57)から「つらい思い、苦しい思いに耐えた人が勝つ」と励まされた。14歳でゴルフを始めて以来、二人三脚を続けてきた父は、5月に肝移植の大手術を受けた。回復途上の今も名医のいる北海道に滞在。「お父さんも頑張っている」と病気と闘う父の存在を支えにした。

 首位と1打差2位で迎えた最終日。スタート前から「今日は優勝する」とあえて自分に言い聞かせた。「今まで優勝を意識せず、冷静にいこうとして裏目に出ていた。今日は気持ちでパットも入れました」。2年連続賞金女王が確実なアンに競り勝っての今季初V。病床の父に、最高の薬をプレゼントした。【田口潤】