<女子ゴルフ:伊藤園レディス>◇最終日◇13日◇千葉・グレートアイランドC(6607ヤード、パー72)◇賞金総額9000万円(優勝1620万円)

 プロ3年目の藤本麻子(21=フリー)が、涙の初優勝を飾った。2打差4位から出てこの日のベストスコア66をマークし、通算10アンダーで逆転勝ちした。09年日本女子アマを制すなどアマチュア時代から活躍を期待されてきたホープ。両親や姉鈴子さん(23)のサポートを支えに、念願の勝利をつかんだ。

 大粒の涙が、こぼれ落ちた。プロ3年目で念願の初優勝。藤本は「長かったです」とつぶやいた。

 攻め続けて、強敵に競り勝った。同組の横峯と2打差で迎えた16番で5メートルを沈めると、17番では6メートルを決める連続バーディーで追いついた。続く最終18番。第2打を池に落とした横峯を尻目に、震える手で2メートルを沈めてパーセーブ。力強く右手を握り締めた。

 涙から始まったプロ人生だった。09年日本女子アマを制しプロテストに一発合格し、注目を浴びた同年9月のデビュー戦で予選落ち。悔しさで目を腫らした。師匠でありキャディーもした父信吾さん(47)からは何度も「何で、できんのや」と怒られた。「父に褒められると誰に褒められるよりうれしいけど、父にしかられると誰にしかられるよりもつらい」。勝てずに、もどかしい日々を過ごした。

 初優勝が目標だった今季も6試合で予選落ち。「見てると、ついつい文句を言ってしまう」とツアー同行を控えだした父に代わって、頼りにしたのは姉鈴子さん(23)だった。成績が悪くても「次や次。気にすんな。やけ食いじゃあ」と言ってくれた。大好きなアイスクリームを一緒に食べる瞬間は最高の気分転換だ。「明日につながる気持ちにさせてくれた」と感謝した。

 育ててくれた父にも、心から頭を下げた。「父が厳しかったから、ここまでこれた」。ホールアウト後、岡山で朗報を待っていた父へ携帯電話で勝利を報告した。おえつをもらす声が聞こえてきた。最高の親孝行ができた。【木村有三】

 ◆藤本麻子(ふじもと・あさこ)1990年(平2)5月28日、岡山県津山市生まれ。幼稚園のころから極真空手を習い1級の腕前を持つ。スキーなどスポーツ歴は豊富で、ゴルフは10歳から父信吾さんに勧められて始める。作陽高1年時の06年大王製紙エリエールでは2日目に65をマークし首位に浮上(最終10位)。09年プロ合格。15歳から石川遼を指導する仲田健トレーナーに師事。世界ランク1位の曽雅■とも親交がある。164センチ、59キロ。※■は女ヘンに尼