<女子ゴルフ:大王製紙エリエールレディス>◇最終日◇20日◇香川・エリエールGC(6419ヤード、パー72)◇賞金総額1億円(優勝1800万円)

 元賞金女王の古閑美保(29=京セラミタ)が、涙で11年のツアープロ人生に終止符を打った。7打差逆転Vでツアー最終戦出場の可能性があった最終日、70とスコアを伸ばしたものの、通算5アンダーで4打差11位に終わった。今後はスポーツキャスター転身を目指す。私生活は婚活を封印、自然の出会いの中でオンナの幸せを探す。李知姫(32)が宋ボベ(25)とのプレーオフを制して、ツアー通算15勝目。賞金ランク1位アン・ソンジュ(24)が8位となり、2年連続賞金女王を確定させた。

 最後の最後に、古閑が泣いた。最終18番パー5。第1打を終え、帯同キャディーの吉田万里子さん(30)に、今季のツアーバッジを手渡した。吉田さんが泣きだした。グリーンに近づくと、同郷の妹分、笠りつ子(24)の泣き顔が見えた。9メートルのバーディーパット、60センチのパーパット。何度もはなをすすった。ホールアウトして、笠に抱きつかれると、もうダメだ。涙がこぼれた。

 「やっぱり、こみ上げるでしょ?」-。17番パー3で、プロ人生初のシャンクが出た。普通じゃいられなかった。

 01年2月8日、ハワイ島の米女子ツアー武富士クラシックで始まったプロ生活。試合より、ショットより心に残るのは、恩師清元登子(72=元日本女子プロゴルフ協会会長)の厳しさだ。同年9月に日本のプロテスト合格後、翌年のツアー出場権を得る予選会に失敗。叱責(しっせき)された数日後、練習をサボッて寝ていたことがばれた。破門宣告を受け、泣いて謝った。昔は「ゴルフは仕事」と割り切っていた。今は違う。「ゴルフが『人間、古閑美保』を作ってくれた」。師とゴルフに磨かれて、天真らんまんなまま、大人になれた。

 これから、やりたいことは山ほどある。ハーレーダビッドソンに乗るため、大型バイクの免許を取る計画は両親の猛反対で断念したが、キックボクシングジム入門は決めた。「ゴルフとは切っても切れないけど、スポーツキャスターもやりたい。タレントにはならない。女優にはなれない」。「彼氏はいません。婚活はやらない。全部失敗したから。自然な流れがいい」。

 ツアー仲間、関係者に無数の花束、写真をもらった。寄せ書きには、石川遼の名前まであった。誰からも愛された古閑が“涙の卒業式”を終え、笑ってコースを後にした。【加藤裕一】