<女子ゴルフ:ダイキンオーキッドレディス>◇最終日◇4日◇沖縄・琉球GC(6439ヤード、パー72)◇賞金総額8000万円(優勝1440万円)

 プロ3年目でノーシードの斉藤愛璃(22=程ケ谷CC)が、開幕戦でツアー初優勝を飾った。首位スタートの1番でダブルボギーと失速したが、粘りのパープレー。通算10アンダーで突入した三塚優子(27)、李知姫(33=韓国)との3人プレーオフを2ホール目に制した。ツアー11戦目の優勝は、16戦の村井真由美(47)を抜く日本人最速。日本女子ゴルフ界にシンデレラが誕生した。

 自分の目を疑った。プレーオフ2ホール目の18番グリーン。斉藤は先にパーをセーブした。すると三塚が80センチのパーパットを外した。「確実に入れてくると思ったので、ビックリした。こういうこともあるんだ…」。まさかの結末。アマ時代からツアー出場11戦目の初優勝は、宮里藍さえしのぐ日本人最速記録。斉藤はぼうぜんとしながら、少しだけ歓喜の涙をこぼした。

 強運だった。レギュラーラウンド。2組前で首位に並んでいた李知姫が最終18番でボギー。難易度最下位の“サービスホール”で昨季賞金2位の実力者がミスをした。同じくボギー上がりとなっただけに、1打の貯金に救われた。

 プレーオフ2ホール目には、三塚が第1打を右に曲げた。まともに第2打が打てない、木の真後ろに打ち込んだ。昨年日本女子プロ覇者のミスで、圧倒的優位に勝負を進められた。

 強運を呼ぶ粘りがあった。初めて最終日を単独首位で迎えた22歳は、1番でミス連発のダブルボギー。いきなり後続に並ばれる。ところが、3番でカラーから20メートルのチップインバーディーを奪った。「絶対に入らないと思ったけど『入れたらかっこいいな』と…。あれで自分を取り戻せた」。ボロボロにならず、パープレーでしのいだ。

 重圧に負けない“自分”を持っている。ブリヂストンスポーツと用品使用契約を結んでいるが、クラブはメーカーがバラバラだ。「私も抵抗はあるけれど、戦う道具なので、自分が使いたいものにこだわりたいんです」。1Wこそ同社のツアーステージだが、FW3本とユーティリティーはSRIスポーツのゼクシオ7などで、アイアンはミズノのJPX、SW2本はクリーブランドのCG16…。

 年末年始にかけ、メーカー2社と初めてクラブフィッティングを行った。“斉藤愛璃仕様”に仕立ててもらい、驚いた。「自分に合うクラブがこんなに楽と思わなかった」。オフのトレーニングで1~2番手分伸びた飛距離と相まって、才能が開花した。

 昨季まではツアー10戦で予選落ち5回、最高位がアマ時代のデビュー戦07年スタンレーレディス31位。“フツーの若手プロ”だったが、開幕戦Vで一気にビジュアル系のシンデレラに。「夢みたいです。私が優勝できるなんて…」。涼やかな目元に、うっすら笑みを浮かべた。【加藤裕一】<斉藤愛璃アラカルト>

 ◆生まれ&サイズ

 1989年(平元)12月6日、神奈川県厚木市で会社員の父壮士さん(48)母みゆきさん(49)の1人っ子として生まれる。165センチ、55キロ。

 ◆ゴルフ歴

 小2のとき、父にSWを与えられ、自宅庭の“鳥かご”で始める。2歳上の吉田弓美子プロを慕い、同プロと同じ県立厚木北高へ。同2年でナショナルチーム入り、同3年で日本女子アマ16強。10年にTPD(トーナメント・プレーヤー・ディビジョン)登録でプロ転向し、昨年3度目の挑戦でプロテスト合格。

 ◆おてんば

 母みゆきさんによると、幼少時にエレベーターで指を挟むことは数知れず。幼稚園の時には、近所の田んぼの水を飲んでしまったとか。

 ◆名前の由来

 「みなさんから宝物のように愛してもらえるよう」にと、父が「あいり」の読みを発案、母が「愛璃」の漢字をあてる。

 ◆趣味

 カラオケ。倖田来未が得意。