<米男子ゴルフ:アーノルド・パーマー招待>◇最終日◇25日◇フロリダ州ベイ・ヒルC(7381ヤード、パー72)

 【オーランド(米国)25日=塩畑大輔】タイガー・ウッズ(36=米国)が、ついに完全復活ののろしを上げた。4バーディー、2ボギーの70でまとめて前日までの単独首位を守り、通算13アンダー275で、実に924日ぶりとなるツアー72勝目を挙げた。左ひざの深刻なケガ、世界中から注目された不倫騒動などを乗り越えての復活優勝。2週間後に迫るマスターズでのメジャー15勝目へ向け弾みをつけた。

 スーパーヒーローの復活劇だった。18番パー4。2オンしグリーンに上がったウッズを、万雷の拍手が出迎えた。前方スタンドを埋めたファンだけではない。後方のフェアウエーにも、優勝を見届けんとするファンがあふれ出した。

 30センチの2パット目をコツンと入れると、ウッズは喜びをかみしめるように1拍置いた後に、力強く右手でガッツポーズした。「ただ純粋にうれしかったよ」。再び会場はハッピーエンドを祝い、大きな拍手と歓声につつまれた。声援にも背中を押され、強風と難しいピンポジションに上位選手が苦しむ中、ウッズが1人スコアを伸ばし続けた。

 トンネルは長かった。米ツアー71勝の快進撃を生んだ力強いスイングに、左ひざが耐え切れなくなった。「練習ができないのはきつかった。スイングを修正することも、試合に向けた調整をすることもできないんだから」。08年に手術も完治せず、09年9月のBMW選手権を最後に、優勝から遠ざかることになった。

 09年11月には不倫騒動も明るみに。試合出場の自粛、スポンサー離れ、セックス依存症の発覚など余波は広がり、肉体だけでなく心やプライドも深く傷ついた。それでも新コーチに師事するなど、新たな試みを重ねて懸命に復活を目指してきた。

 今年は好調を印象付けながらも、今月初旬のキャデラック選手権では、再び左ひざの痛みで途中棄権。マスターズ出場が危ぶまれたが、何とか間に合った。「あと1勝でツアー通算勝利数がニクラウスと並ぶけど、それ以上にグリーンジャケットがほしい」。復活の余韻に浸るでもなく、早くもメジャー15勝目を「虎視眈々(たんたん)」と狙っている。