<男子ゴルフ:東建ホームメイト杯>◇3日目◇14日◇三重・東建多度CC(7081ヤード、パー71)◇賞金総額1億3000万円(優勝2600万円)

 過去5度の賞金王を獲得した片山晋呉(39=フリー)が通算9アンダーの204で、21位から単独首位に躍り出た。午前中の雨や強風で他選手が次々と崩れる中、1イーグル、4バーディーでこの日ベストスコアの65をマーク。ツアー26勝を誇る永久シード権保持者が09年マスターズ4位を契機に陥った「燃え尽き症候群」から脱出し、08年11月のVISA太平洋マスターズ以来、約3年5カ月ぶりの優勝に王手をかけた。

 勝利への執着心が肉体に宿っていた。後半17番パー5、残り239ヤードの第2打。片山は7番ウッドでピンまで8メートルの位置につけた。上りのロングパットを沈めてイーグルを奪い、右拳を力強く握った。最終18番も5メートルのパットを入れバーディー。6つスコアを伸ばし「2日目まで出来は良かった。今日はもっと良かったぐらい。ボギーになりそうなところはなかった」。表情には自信が満ちあふれていた。

 気温は前日より7・2度も低い12・9度と寒かった。午前中には雨、強風が最後まで続いた。他選手がスコアを落とす中で強気の姿勢を貫けた。2位に入った2週間前の千葉県オープンで「今日よりもすごい強風だったけど、何年かぶりに感触が良かった」。オフにパワー不足を腰の回転で補って飛距離を稼ぐ女子のスイングに近い形に改造。北田瑠衣や諸見里しのぶの腰の回転を参考にし「09年春に取り組んだ体の使い方。弾道が力強くなった」と手応えをつかんでいた。

 09年マスターズでは首位と2打差の10アンダーで4位に入り、日本人最高成績を挙げた。だが以後は苦闘が続いた。勝利への貪欲さが失われ「燃え尽き症候群」に陥った。そんな時、大先輩の中嶋常幸に「1度、炭になるとなかなか火はつかないが、ゆっくりやれ」との助言を受けて救われた。「少しずつもがきながら『やろう、やれるんだ』という気持ちになった」と勇気づけられたという。

 先週のマスターズをテレビ観戦し「もう1回出たいな」と思えた。現在152位の世界ランクも気にするようになった。国内ツアーでは最終日を単独首位で迎えた過去22回のうち優勝は18回と勝率81・8%。再び心に火が付いた片山が、1245日ぶりの国内ツアーVを目指す。【藤中栄二】