今日27日開幕のサイバーエージェントレディス(千葉・鶴舞CC)で、異例の「虫除去」ルールが適用されることが26日までに決まった。気温上昇の影響でフェアウエーを中心にコガネムシが大量発生。25日のプロアマ戦で球に付着するケースが多数見られたため、元の位置より半径6インチ(15センチ)以内でプレース(ボールを置き直す)できる特別規則が急きょ追加された。虫を苦手とする女子選手が多いだけに、虫対策が優勝争いを大きく左右するかも!?

 コースの芝には、約8~10ミリ程度の小さな黒い影が数多く見られた。正体はコガネムシ。体表は緑色の光沢があり、日本全土に生息しているというマメコガネとみられる。通常は5~10月にかけて成虫が出るが、会場関係者によれば「急に暖かくなった影響もあって、今週に入って特に多くなりました」と明かした。

 この日は降雨で気温が下がったこともあり、コガネムシの動きは鈍かった。しかし25日に開催されたプロアマ戦は天気が良好だったこともあり、フェアウエー中心に大量にコガネムシが発生していたという。ボールの上に止まったり、下に潜り込むようなシーンが数多く見られ、選手から「気持ちが悪い」「プレーに集中できない」との声が続出。試合に悪影響を及ぼすとして、日本女子プロゴルフ協会の競技委員会は追加特別規則の適用を決定。スルー・ザ・グリーン(ティーグラウンド、グリーン、ハザードを除く場所)に止まっている球は、元の位置より半径6インチ以内で、罰なしにプレースできるルールを選手に通達した。

 虫嫌いは男性よりも女性の方が多いとされる。前週のフジサンケイクラシックでツアー初優勝した大江香織(22)も「苦手です」と困惑した表情。最終調整を行ったこの日も、コース内のトイレを使用した際にカメムシがきたことを明かし「ぎゃーぎゃー、騒いでしまいました。昔は羽アリが耳に入って嫌な思いもしました」と顔を曇らせた。有村智恵(24)は「虫が多すぎると集中できない。ルールを出してくれたので良かったです」とローカルルール適用を歓迎。最終日29日は晴れの予報だけに、コガネムシ大量発生の可能性は十分。今ツアーは天気、強風でなく、虫との戦いが、勝敗を分けるカギになりそうだ。【藤中栄二】

 ◆コガネムシ

 昆虫の甲虫目に分類され、主にセンチコガネ科、コガネムシ科に分かれる。コガネムシ科はコフキコガネ、ハナムグリ、カブトムシなどの各亜科に細分化。世界に約3万種、日本には約360種が分布。体色は光沢の強い緑色、赤紫、黒紫など。生息環境は雑木林、田畑、川、公園などさまざま。成虫が姿を現すのは5月から夏あたり。成虫は有機物の多い土を好んで産卵する。幼虫の状態で越冬し、春先にはさなぎになる。

 ◆特別6インチルール

 スルー・ザ・グリーン(ティーグラウンド、グリーン、ハザードを除く場所)に止まっている球は拾い上げて拭き、元の位置より半径6インチ以内で罰なしにプレースできる。コガネムシはルースインペディメント(自然物)と認められ、拾い上げる前に、その位置をマークしなければならない。マークしなかった場合は1罰打。またコガネムシによって球が動いた場合は、局外者によって動かされたことになり、無罰でその球はリプレースとなる。

 ◆過去の特別規則

 02年12月、日本シリーズJT杯で、中嶋常幸が17番第1打でコースを横切る約40メートルの高さの送電線にボールを当て、打ち直しのローカルルールが適用。04年11月、三井住友VISA太平洋マスターズでは悪天候によるコース状態不良で、フェアウエーやラフでボールを拾い上げて拭くことが許可。10年8月、NEC軽井沢72ではコース内の芝が枯れる悪条件が点在したため、公平さを図る目的でグリーンとハザード以外の場所では球を拾い上げて拭き、6インチ以内に置けることになり、ほとんどの選手がこの規則を使ってプレーした。