<米女子ゴルフ:全米女子オープン>◇2日目◇6日◇米ウィスコンシン州コーラー・ブラックウルフラン(6954ヤード、パー72)◇賞金総額325万ドル(約2億6000万円)優勝58万5000ドル(約4680万円)

 4位で出た宮里藍(27=サントリー)は前半スコアを崩したが、1バーディー、3ボギーの74にまとめ、首位と5打差の通算イーブンパー144の13位に踏みとどまった。普段の冷静沈着さをかなぐりすて、ラウンド中に珍しくキャディーと口論。「悪い言葉」をぶつけるなどヒートアップしたが、そのことで気持ちの整理をつけ、その後のバーディーにつなげた。前週に今季2勝目を挙げ、初の海外メジャーVへの期待も高まる中、今までにないメンタルコントロール術で優勝争いに食らいつく。

 いつもクールな宮里藍が、公衆の面前で珍しく声を荒らげた。14番パー4。残り114ヤードをピッチングウエッジで狙った第2打は、硬いグリーンに止まりきらず、奥の茂みに転がり込んだ。アンプレアブルを選択し、第4打を1・5メートルにつけてボギー。最小限のダメージで切り抜けたが、グリーン奥に潜む危険を予知できなかった自分への、強い怒りはおさまらなかった。

 宮里藍

 エッジまで95ヤードしかない。グリーンがはねるのも分かってた。奥のブッシュは十分可能性があったのに、なぜピンを狙っちゃったんだろう。

 キャディーのミック・シーボーン氏

 (難しい設定の)全米オープンだし、こういうこともあるから、ここからがんばろうよ。

 宮里藍

 そんなの、もう分かっているよ!

 だからやっているじゃん!

 まさかの口論に、見守る周囲は思わず息をのんだ。しかし本人は、思いのたけをぶつけたことで、ケロッと本来の冷静さを取り戻していた。直後の15番パー4の第1打から、スムーズなスイングでのナイスショットが続く。16番パー5では、第3打をピン手前1・5メートルにつけ、この日初めてのバーディーも挙げた。

 宮里藍

 (連続ボギーの)5番の第1打あたりから、ミスコミュニケーションがあったから、14番で爆発した(笑い)。我慢していると集中できないので、彼に言ってすっきりした。もう悪い言葉ばっかり。ひどい。言えないです。自分の気持ちをうまく発散して、次に進めたのは良かったですね。普段はあまりそういうことはしないんですけど。これだけ我慢が続くと、自分としてもぎりぎり。感情を抑えるのが難しい。でもそれをやってこその全米オープンだと思います。

 09年の今大会でも、キャディーと意見がぶつかった。しかしその際は口論にはならず、和解したのはラウンド後。今回はすぐに言い合うことで、ラウンド中に集中力を取り戻せた。

 師事するメンタルトレーナーの教えもあり、感情の波が見えない淡々としたプレーぶりで、海外メジャーでも常に安定した成績を残してきた。しかし一方で、優勝にはあと1歩届かずにきたのも事実だ。

 優勝候補筆頭と目されて臨む、世界最高峰の舞台では、周囲の強い期待をひしひしと感じる。もちろん自分に対する期待も強い。どうしても勝ちたい-。自分の信条にそむくように、珍しく感情をあらわにした宮里藍だが、このことが「メジャーの壁」を初めて突き破るきっかけになるかもしれない。