【ガレイン(英国)16日=塩畑大輔】プロゴルファー松山英樹(21=東北福祉大)が、世界的ブランドを本気にさせた。18日に開幕する海外メジャー、全英オープン選手権に向け、会場の英国・ミュアフィールドで15日に練習ラウンド。そこに松山とのウエア契約を熱望するドイツの高級アパレルブランド、ヒューゴ・ボスの本国幹部がお忍びで視察に現れた。くしくも同じくオファーを出しているユニクロも、幹部が現地を訪問。評価も世界ランクも急上昇の有望株をめぐる場外戦が、いよいよヒートアップしてきた。

 15日、練習ラウンドを行った松山には、多くの英国人ファンが同行し、サインを求めた。「彼のことは、大会のホームページで見たよ」という。第1、2日に同組で回るマキロイ、ミケルソンとともに、公式サイトのトップページに写真が並べられ、注目度は急上昇しているのだ。さらにこの日はファンとは違う角度から、ファン以上に熱い視線も送られていた。

 その1つはドイツの高級ブランド、ヒューゴ・ボスの幹部からのものだった。松山獲得を熱望する同社は、日本の支社や、スポーツ選手・大会のスポンサーシップ部門といった「現場」を飛び越えて、一気に本社のマーケティング部門のトップを送り込んできた。

 スーツなど「本業」のアパレル部門も統括する幹部が視察する理由は、松山へのサポート方針にもあるという。ゴルフ界の枠を超え、日本を代表するアスリートになることが期待される松山は、今後コース以外で、さまざまなイベントなどに参加する機会が増える。ゴルフウエアだけでなく、公の場向けのスタイリッシュなスーツを提供することで、選手としてのステータスを上げる一助になりたいというのが、同社の考えだ。

 かつてJ1浦和なども公式スーツを提供されたが、ヒューゴ・ボス・ジャパンとの契約だった。F1のマクラーレンや、マーティン・カイマー(ゴルフ)マリオ・ゴメス(サッカー)らが、同様のサポートを受けているが、主にドイツのチームやドイツ人。アジアでこのクラスのサポートを受ける選手はいない。

 この日は日本の最大手ユニクロも、松山獲得へ動いていた。マスターズ覇者アダム・スコットとの契約を実現させた、柳井正会長の次男康治氏が訪問。東北福祉大ゴルフ部の阿部監督ら関係者と話をした後も、松山のショット練習やラウンドを真剣な表情で見つめていた。選手としてワールドクラスになりつつある松山の争奪戦は、まさに世界規模で展開されている。

 ◆HUGO

 BOSS(ヒューゴ・ボス)1924年に立ち上がったドイツの高級ファッションブランド。軍服や作業服のデザインを経て、第2次大戦後の1950年代に男性用スーツを発表。人気のスーツブランドとして定着した。現在までに124カ国、6000店舗以上で販売される世界的なブランドとなった。10年度の売上高は約2300億円。

 ◆松山の契約

 クラブメーカー大手4社のオファーを受ける中、今月1日にダンロップスポーツと用具使用契約を締結。ドライバーを含む大半クラブや帽子、シューズなどが盛り込まれたが、ウエアは除外されていた。現在は所属する東北福祉大のロゴ入りユニホームを着用。またサングラスなどのアイウエアは、オークリー・ジャパンと契約。