<女子ゴルフ:KKT杯バンテリンレディース>◇最終日◇20日◇熊本空港CC(6455ヤード、パー72)◇賞金総額1億円(優勝1800万円)

 女子ゴルフ界にニューヒロインが誕生した。アマチュアの勝みなみ(鹿児島高1年)が、「15歳293日」の日本女子ツアー史上最年少優勝を飾った。1打差2位スタートの最終日に68をマークして通算11アンダー。2位イ・ボミ(25)に1打差をつけた。ツアー出場12戦目で、これまでの最年少記録だったキム・ヒョージュ(韓国)の「16歳322日」を更新。宮里藍が樹立した18歳101日の日本人最年少記録も塗り替え、史上4人目のアマチュアVで新たな歴史を作った。

 キュッと結んだ後ろ髪が揺れる。ギャラリーが取り囲んだ最終18番パー5。勝は、グリーン右バンカーから第4打をピン2メートルにつけた。事実上のウイニングパットは下りスライスライン。「カップ1個分」のふくらみを計算して、流し込むと大歓声が上がった。

 優勝の瞬間は、グリーン横のスコア提出所で迎えた。1つ後ろの最終組で2打差をつけたイ・ボミの第3打がピン前2メートルに止まり、快挙が決まった。「いやあ、何か自分の体じゃないみたいで…。最後のパットだけ、優勝を意識しましたけど…」。きょとんとした顔はツアー最年少覇者というより、15歳の少女のそれだった。

 首位福田真との1打差を追う最終日、2番パー4で初バーディーを奪い、最終組の福田真が2番でボギーをたたいた。そこから1度も単独首位を譲らなかった。プロがスコアメークに苦しむ中、5バーディー、1ボギーの68はこの日のベストスコア。4、5、12番ではバンカーに入れながら好アプローチを見せ、1メートル前後のパーパットを確実に入れた。

 怖いもの知らずの鈍感力は、自然児ならではだ。幼少時、祖父の市来龍作さん(74)とゴルフ場に行っても、目当てはプレーじゃない。池でオタマジャクシを捕まえ、大きな松ぼっくりを拾い、すみれやタンポポを摘んでばかりいた。

 根性も並じゃない。「13歳328日」の大会最年少Vを決めた12年九州女子アマでは、左手人さし指の骨折をおしてプレーした。2日前のバスケットボールで痛めていた。母久美さん(47)に「欠場しなさい」と言われても「絶対出る」と譲らなかった。

 歌いながらラウンドするスタイルは、この日も変わらなかった。大ファンの阪神の応援歌「六甲おろし」こそ出なかったが、3番で突然歌い出したのが「アイスクリームのうた」だ。「突然(頭に)降りてきた」。前夜の食事が焼き肉で、石焼きビビンバ、肉の盛り合わせ、サラダバー、ジュース2杯…と平らげ、デザートでプリンを食べた。「アイスと迷って。それで『アイス食べなかったなあ…』と思ったら思い出した」。幼稚園で習った歌が、快進撃のBGMだった。

 次戦は5月2日開幕のサイバーエージェントレディース(千葉・鶴舞CC)。「これからもプレッシャーはそんなに感じないと思います。普通にプレーしたい」。無邪気に楽しいスーパーヒロインは、最後までニコニコ笑っていた。【加藤裕一】