<男子ゴルフ・東建ホームメイト杯>◇最終日◇20日◇三重・東建多度CC名古屋(7109ヤード、パー71)◇賞金総額1億3000万円(優勝2600万円)

 宮里優作(33=フリー)が、1番から5連続を含む8バーディー、2ボギーの65で回り、1打差2位から鮮やかな逆転優勝、ツアー2勝目を飾った。プロデビューして11年目の昨年12月8日、日本シリーズJT杯で涙の初優勝から133日。「強くて、うまい」ゴルファーに変身し、年をまたいだ“国内ツアー連勝”で、今季の賞金王争いに名乗り出た。

 人は1つのきっかけでこれほど変われるものだろうか。最終日72ホール目、宮里優が1メートルのパーパットを沈めた。通算14アンダー、2打差で追う最終組の岩田を残すものの優勝をほぼ確実にした。だが、ホールアウトした宮里優はギャラリーに笑顔で応え、パターを握った右手に少し力を込めただけだった。年またぎの国内ツアー連勝。無冠の大器がツアー2勝目を挙げ、確実に殻を破った瞬間は静かなものだった。

 首位に1打差の2位で、最終組から1つ前の組でスタートした。昨年12月8日の日本シリーズJT杯では、単独首位で最終日を迎えた。「あの時は心がざわついていたけど、今日は調子もいいし、追いかけてやるという気持ちでいっぱいでした」。1番でピン右9メートルのバーディーを放り込んで首位に並びかけると、積極性に拍車がかかった。2番から次々とアイアンショットをピンにからめ、パットを面白いように決める。ツアー2度目の5連続バーディーで、一挙に後続を突き放し独走態勢に入った。

 4アンダー19位でホールアウトしていた兄聖志(37)が言う。「あの1勝で余裕が本当に出た。勝てない時は『優作は1回勝てば、10回くらいすぐ勝てる』と言ってましたから」。日本中のゴルフファンが涙した、劇的チップインパーでの優勝から133日。今オフは勝っておごらず、風に強い中弾道のアイアンショットを練習し「うまいゴルファー」へさらに磨きをかけ、心の強さも宿った。

 実は16番の3パットボギーで、心がざわついた。17番では第2打を左がけ下に落とした。以前の宮里優ならオドオドしたが、このミスに堂々と対処していた。「不安要素がないので、大丈夫だと思ってました」。松山、石川が米国へ行き、今季の賞金王争いは混沌(こんとん)としている。「賞金王?

 まだ大穴くらいです」と笑った宮里優に本命の輝きがあった。【町野直人】

 ◆宮里優作(みやざと・ゆうさく)1980年(昭55)6月19日、沖縄県生まれ。宮里3きょうだい(兄聖志、妹藍)の次男として、3歳からゴルフをはじめ、東北福祉大では数々のアマタイトルを獲得。プロとしてのツアーデビューは03年。170センチ、70キロ。