<女子ゴルフ:CATレディース>◇最終日◇24日◇神奈川・大箱根CC(6701ヤード、パー73)◇賞金総額6000万円(優勝賞金1080万円)

 上田桃子(28=フリー)が涙の逆転優勝で、3年ぶりのツアー通算10勝目を挙げた。3打差2位でスタートし、12番のバーディーで森田理香子(24)を逆転。5バーディー、1ボギーの69、通算9アンダー210で、11年ミズノクラシック以来の優勝となった。昨季は米ツアーのシードから落選。7年ぶりに日本ツアーに本格復帰した今季も結果が出ず、不振脱出のために米ツアー選手のプライドを捨てた。技術、肉体面など、自分の足元を見つめ直し、復活につなげた。

 勝てなかった3年間を思い出すと、我慢していたものが込み上げた。優勝スピーチで上田は「本当に長かった。米国に行ったことが良かったのかと…」と言葉に詰まった。07年には「イケイケ」の攻めのゴルフで年間5勝を挙げ賞金女王に輝いた。区切りの10勝目。3年ぶりの1勝は、どの優勝よりも重く価値があった。

 4つ目のバーディーで森田に並んだ直後の8番パー4。8メートルのバーディーパットをオーバーさせ、3パットのボギーをたたく。喜怒哀楽の激しい性格。今までなら気持ちが切れるところだが「自分が試されてるな」と笑みさえ浮かべた。12番パー3では2メートルのバーディーパットを決めて逆転。15、16番のピンチも粘ってパーを拾う。最後まで冷静なゴルフを貫いたことが、最大の勝因だった。

 昨年は6年間戦った米ツアーのシード権を喪失。7年ぶりに復帰した日本ツアーでも春先は不振が続く。3~4月にかけて3連続予選落ちし、地元熊本のバンテリン・レディースも予選を突破できなかった。「ゴルフが楽しくない」と母八重子さんにこぼした。どん底だったが、そのとき「今年1年は捨てる。勝つことより、自分を固める。プロセスを大事にしよう」と決意した。

 原点に戻り、ショットは気持ち良く、テンポよく振り切る。結果より、目の前の1打に集中。メンタル強化のため、年間20勝を挙げながら右肩のケガで引退に追い込まれた元ソフトバンクの斉藤和巳元投手の話も聞いた。他分野のトップ選手の本は何冊も読んだ。スポーツ選手の栄養を専門にした料理学校にも入校。視野を広げたことで、追い詰められた心に余裕が生まれた。自然とプレーも安定してきた。

 優勝インタビューで涙は出たが、号泣することはなかった。「3年間苦しかったが、いろいろ勉強になった。ここで終わりじゃないし、安心もしない」とツアー通算10勝は通過点であることを強調。今後は熊本の先輩でもある不動裕理が03年に記録した年間10勝の大記録を目指す。「勝ち続けるのは難しいが、残りのゴルフ人生の目標にしたい」。「イケイケ」から「大人のゴルフ」へ。桃子は確かに生まれ変わった。【田口潤】

 ◆上田桃子(うえだ・ももこ)1986年(昭61)6月15日、熊本県生まれ。9歳からゴルフを始める。東海大二高卒業後の05年にプロテストに一発合格。07年ライフカードレディスで初優勝。同年5勝を挙げ史上最年少21歳で賞金女王に輝く。08年から米女子ツアーに本格参戦。今季から7年ぶりに日本ツアー本格復帰。趣味は音楽鑑賞、ショッピング。日本ツアー通算10勝。161センチ、54キロ。