<女子ゴルフ:日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯>◇最終日◇14日◇兵庫・美奈木GC(6645ヤード、パー72)◇賞金総額1億4000万円(優勝2520万円)

 プロ2年目の鈴木愛(20=フリー)が、大会史上最年少で日本一の称号を手にした。首位スタートの最終日、2番で18メートルの超ロングパットをねじ込んでバーディーを奪うなど、71で通算5アンダー。憧れの上田桃子、申ジエ、同期合格の成田美寿々とのV争いを制し、06年宮里藍の21歳83日を更新する「20歳128日」で大会最年少記録を樹立した。大会史上初の初出場初優勝で金字塔を打ち立て、来季から3年のシード権を獲得した。

 最終18番で30センチのボギーパットを入れると、涙が出た。「優勝した実感がないんです。長い1日だったので」と鈴木は言う。徳島・三加茂中3年の全国大会で2位に終わって、悔し泣きした。同じ年に四国女子アマに勝って、うれし泣きした。ゴルフ人生3度目の涙は、自然とこぼれ出た。

 自分でも驚くほど、プレッシャーがあった。この日朝。コースのレストランで食事がのどを通らなかった。スクランブルエッグ、ソーセージ、味付けのり、ご飯、みそ汁が食べられない。ヨーグルトはお茶で流し込んだ。「こんなの初めて」と母美江さん(43)が案じた。しかし、耐えた。鳥取・倉吉北高の時、ゴルフ部コーチだった父健司さん(46)とけんかして謝らず、練習場に置き去りにされ、キャディーバッグを背に2時間も歩いて帰った。負けず嫌いの血が、弱気の虫をねじ伏せた。

 劇的なバーディーで、運命の扉を開いた。スタート1番でバーディーを奪い、2番パー4へ。ピン右前18メートルのグリーン脇カラーから、フックラインの超ロングパットをねじ込んだ。「2パットで良かったのに…。すごくびっくりした」。ガッツポーズも忘れて、目を丸くした。2連続バーディーで2位との差を、スタート前の1打から3打にし、1度も首位を譲らなかった。

 運命的な優勝だ。「プロになる」と決めたきっかけは中2の時、フランスのエビアンマスターズのジュニア大会で上田と一緒に写真を撮ってもらったこと。その上田に勝った。「ボギーでも笑顔を忘れない。あんなプロになりたい」と目標にする申ジエにも勝った。昨夏、今大会開催コースであった最終プロテストでともに合格した、同期の出世頭・成田にも勝った。

 第2日から首位を譲らず大会史上初の初出場初優勝を飾った。憧れの宮里藍の大会最年少優勝記録を塗り替えた。

 「私が最年少って…。すごくビックリです。これからプレッシャーになるんじゃないかな。すごく運が良かった。まだそんな実力じゃないのに」

 小麦色の肌に、真っ白な歯を輝かせ、20歳のシンデレラが元気に笑った。【加藤裕一】<鈴木愛の記録>◆今大会では

 ▼初出場初優勝

 88年ツアー施行後で初。施行前には第1回の68年樋口久子、84年黄(コウ)ゲッキンが達成。

 ▼最年少優勝

 「20歳128日」で06年大会の宮里藍の21歳83日を更新。◆国内メジャーでは

 ▼ツアー初優勝

 鈴木愛で8人目。過去に日本女子プロで81年鈴木美重子、84年黄(コウ)ゲッキン、日本女子オープンで73年小林法子、06年ジャン・ジョン、10年宮里美香、サロンパスカップで10年M・プレッセル、ツアー選手権で96年井上陽子。

 ▼ノーシード選手V

 ツアー施行後、日本女子プロ、日本女子オープンの「日本タイトル」では初。<国内メジャーの年少優勝上位5傑>(1)平瀬真由美(20歳27日)89年JLPGAレディーボーデンカップ(2)宮里藍(20歳105日)05年日本女子オープン(3)鈴木愛(20歳128日)14年日本女子プロ(4)横峯さくら(20歳348日)06年LPGAツアー選手権(5)宮里美香(20歳358日)10年日本女子オープン※レディーボーデンカップは現在のLPGAツアー選手権※左から、順位、選手名(V年齢)、達成大会