<男子ゴルフ:ANAオープン>◇最終日◇21日◇北海道・札幌GC輪厚(7063ヤード、パー72)◇賞金総額1億1000万円(優勝2200万円)

 宮本勝昌(42=ハートンホテル)が今季初優勝、10年日本ツアー選手権以来4年ぶりとなる通算9勝目を挙げた。首位から出て67で回り、通算18アンダー270で並んだ谷原秀人(35)とのプレーオフに突入、1ホール目でバーディーを奪い、競り勝った。勝てない苦しい日々を乗り越えての勝利で、大会恒例の客室乗務員(CA)との記念撮影に「夢がかなった」と喜んだ。今季国内ツアー4戦目の出場だった石川遼(23)は通算10アンダーの15位だった。

 CAに囲まれて優勝カップを掲げ、宮本の笑顔が一層華やいだ。第2日に2位になった時点で「CAさんと写真が撮りたいです」と優勝への意欲を表現。本大会7勝の尾崎将や、一昨年大会覇者で練習仲間の藤田のそうした写真を見て「いつか自分も」と夢見てきたという。そんなモチベーションも、勝利への執念につながった。

 18番でのプレーオフでは残り148ヤードの第2打を、8番アイアンでピン左7メートルにつけた。「谷原はボギーは打たない。ミドルパットを入れるしかない」というシナリオ通りの展開。正規の18番でグリーン左エッジからのアプローチと同じラインで、微妙なスライスをイメージ通りに沈めて勝負をつけた。

 4年ぶりの勝利だ。藤田やトレーナーの太田敦さん(37)と抱き合い、目を潤ませた。優勝スピーチで父勝雄さん(72)が北海道出身であることに触れると、声が少し裏返った。テレビカメラに向かい「翔太郎、悠生(ゆうき)、パパ、やったよ!」と息子の名を呼んだ。前回優勝時、次男悠生くん(6歳)はまだ物心がついていなかった。

 20年近く練習や遠征をともにする藤田の存在も大きかった。「藤田さんは人一倍練習して、人一倍考えている。そういう先輩の背中を見ることができる」。いつも「もっと練習しなくては」と感じるという。太田トレーナーによると、2年ほど前はスイングの感覚を維持するため、宿舎でも靴べらで素振りを繰り返していた。

 一方で藤田は「自分と比較され、宮本もつらい部分があったと思う」と話す。藤田は一昨年の賞金王、通算17勝のうち11勝が40歳を過ぎてから。「僕はコツコツ型のカメ。彼はメリハリのあるウサギ。ウサギでいいと思うけど…」。藤田の勝利を仲間として喜ぶと同時に、勝てない自分にもどかしさを感じた時もあったに違いない。次の目標を尋ねられ、宮本は「来週予選通過して、優勝争いすること」と答えた。眠りから目覚めたウサギがまた走りだす。【岡田美奈】

 ◆宮本勝昌(みやもと・かつまさ)1972年(昭47)8月28日、静岡県生まれ。13歳からゴルフを始め、茨城・水城高から日大。91年日本アマ優勝、同期に片山、横尾。95年にプロ転向し、98年つるやオープンで初優勝、その後日本シリーズ2勝、日本ツアー選手権2勝など。99年には米ツアーにも参戦。06~11年にツアー151試合連続出場の記録つくる。選手会長も3期務めた。得意クラブはドライバー。プレーオフはこれで2勝2敗。174センチ、76キロ。