<米男子ゴルフ:フライズコム・オープン>◇最終日◇12日◇米カリフォルニア州シルベラードリゾート北C(7203ヤード、パー72)

 松山英樹(22=LEXUS)が開幕戦で復活ののろしを上げた。3バーディー、1ボギーの70で回り、通算12アンダー276で3位に入った。ピンチを未然に防ぐ巧みな試合運びを見せて、優勝した6月のメモリアル・トーナメント以来のトップ10。念願のメジャー制覇につながる戦略面でのレベルアップを証明した。

 トンネルを抜けた手応えを、確かに感じていた。3位で開幕戦を終えた松山は「お先真っ暗から、少しずつ光が見えてきた」と明るい表情を見せた。4カ月半、米ツアー10戦ぶりとなるトップ10入り。成績同様に、内容にも満足していた。

 昨季後半、左手首のケガは完治したが、そこをかばうスイングの悪癖が残った。連戦の疲労もあり、長いスランプに陥った。しかし昨季終了後3週間の休養で心身ともにリフレッシュ。新アイアンを採用し、ウエッジを4本入れた“新布陣”が奏功した。

 そしてこの日はコース攻略のための「戦略」が際立った。ボギー先行直後の7、8番。続けてパーオンに失敗した。しかしどちらも、上りの易しい寄せが残り、楽々パーセーブ。悪い流れを簡単に断ち切った。たとえグリーンを外しても、難しいアプローチが残らない方向を意識して、ピンを攻めていた。16番パー5でも、残り245ヤードから2オン狙いの場面で、あえてグリーンをオーバーする番手を選んだ。ピン右や手前からのアプローチ、パットを寄せ切れない他の選手を横目に、奥からのアプローチを1メートル弱のバーディーチャンスに寄せた。

 こうした場面で打つ前に、昨季と比べると進藤大典キャディー(33)と入念に打ち合わせる場面が増えたように見えた。松山にとって初のコース。同キャディーは大会前、練習が終わった後も日没まで会場に残り、丹念にグリーン周りなどを調べていた。どこからならアプローチが寄りやすく、どこからは寄りにくいか、すべて頭に入っていた。

 もともと松山のショット力はツアー屈指。“軍師”との密な打ち合わせで、わずかなブレが出た際のリスク管理までできれば、まさに鬼に金棒だ。優勝を目指すメジャーは、いずれも難コース、難セッティング。今大会以上に戦略面の向上は生きてくるはずだ。

 「13~16番と続けて好機で外したのが痛かった。そこで入っていれば18番のイーグルパットも入ったし、優勝のチャンスもあった」と松山。逆に言えば、パット以外は充実の一途ということだ。今季は軍師の助言も生かし、本気でメジャーを取りにいく。