<女子ゴルフ:伊藤園レディース>◇第2日◇15日◇千葉・グレートアイランドC(6639ヤード、パー72)◇賞金総額1億円(優勝1800万円)

 プロ9年目の前田陽子(29=フリー)が通算7アンダー137で、首位に1打差3位の好位置につけた。1打差2位から出て、5バーディー、2ボギーの69で回った。09~13年までツアーは1試合も出られず、段ボール工場で働きながらゴルフを続けてきた苦労人。26日の「三十路(みそじ)」の誕生日を前に、遅咲きの花を咲かせるチャンスをつかんだ。

 伏兵・前田が優勝争いに食い込んできた。4番では残り165ヤードをロフト27度のユーティリティーで、5番パー5では残り80ヤードの第3打をいずれも3メートルにつけて連続バーディー。17番では「自分でも覚えていない」という15メートル超級のロングパットがカップ縁で弾んで飛び込んだ。「このコースに対してこのスコアは最高ですね」と、この2日間を満足そうに振り返った。

 異色の女子プロだ。06年プロ転向も、07年まで賞金ゼロ。08年に「これで落ちたら諦めよう」の覚悟で、5度目のプロテスト挑戦で合格し、同年は4試合に出た。だが、その後は出場予選会に失敗、昨季までは下部ツアー暮らしだった。

 「ゴルフだけでは食べていけない」と、地元の徳島・小松島市の段ボール工場でアルバイト。「力仕事もしました」。時給750円から始まり、安全靴にヘルメットで、午前9時から午後4時まで働き、その後ゴルフの練習をした。「ゴルフをやめて、他の仕事を」と思う時もあったが、「プロになったからにはツアーに出たい」という一心で頑張り続けてきた。

 昨年末、やっと今季の出場権をつかみ、8年近くで時給810円にしてもらった工場を退職、ツアーに専念した。工場は王子製紙の関連会社だったことから、今は袖にスポンサー名として「nepia」の文字を入れている。

 8月meijiカップの10位が自己最高位。初の優勝争いに「緊張せずにやれるとは思えない」と照れ笑い。一方でアマ時代から活躍するエリートプロに対しては「そういう意味では負けたくない。結構、苦労しましたから」と力強い。好きな言葉は「我慢」と「辛抱強く」-。勝機をジッと待ち続ける。【岡田美奈】

 ◆前田陽子(まえだ・ようこ)1984年(昭59)11月26日、徳島県生まれ。12歳からゴルフを始め、香川西高出身。06年からツアープロ単年登録、06、07年にツアー1試合ずつ出場も予選落ち。08年プロテスト合格は森田理香子、木戸愛らと同期。08年4試合出場でヨネックス・レディース27位が最高位。今季は32試合出場で19試合で予選通過、現在獲得賞金1042万666円で、ランク68位。得意クラブはピッチングウエッジ。164センチ、60キロ。