<女子ゴルフ:大王製紙エリエールレディース>◇最終日◇23日◇香川・エリエールGC(6428ヤード、パー72)◇賞金総額1億円(優勝1800万円)

 横峯さくら(28=エプソン)が、涙のミセス初優勝を飾った。自身の今季国内最終戦の最終日に68をマークし通算18アンダー。2打差2位から逆転した。メンタルトレーナーで夫の森川陽太郎さん(33)の支えで今季初、ツアー通算23勝目を挙げた。生涯獲得賞金は史上2人目の10億円を突破。12月に挙式を控えるヒロインは「30歳で引退」も視野に入れて、来月3日からの米ツアー最終予選会に臨む。

 最後の最後まで苦しんだ。後続に1打差をつけていた最終18番パー5。横峯のバーディーパットは7メートルから1メートルもショートした。外せば4人のプレーオフ。「これが今の自分の実力なんだ」と割り切ると、ボールはカップに消えてくれた。

 グリーンサイドで見守る夫、陽太郎さんの姿が見えない。大歓声の中、少しうつむいて、帽子のつばの下を右手で拭った。

 「結婚して成績が落ちた、という声が少なからず、私たちの耳に届いていましたから…」

 今年4月22日の結婚後、国内21戦目。12月20日の披露宴を前に、やっと手にしたミセス初Vは、過去22勝以上の喜びがあった。

 夫の愛のムチに応えた1週間だった。「本当に主人のことを恨んでやろうか…そう思うほど苦しめられました」と笑う。

 開幕前日19日。メンタルトレーナーとしての夫と決めた目標は通算16アンダー。「じゃあ、4アンダー×4日でいいね」と言うと、自分の出遅れ癖を指摘されて「いや、1日7アンダーを目標にしよう」と言われた。前日22日。通算14アンダーにした。「あと2つだ」と思ったら、夫は「最終日も7アンダーを目標に行こう」と言う。「まだプレッシャーをかけるのかと言い合ったんですが」。結局は従った。

 しかし、重圧を跳ね返す“人間力”を与えてくれたのも夫だ。婚約中の今年2月、2人でインド洋上のリゾート地モルディブに行った。靴を履いてはいけない小さな島で10日間、シュノーケリングをしたりしてボーッと過ごした。9月のエビアン選手権前にはイタリア旅行へ。ゴルフ以外の目的で初めて海外に行き、ゴルフ以外の人生を教えてくれた。「気持ちに余裕ができた。ゴルフが生活の大半だったのに、一部になった」と横峯は言う。

 米ツアー最終予選会のため、27日に渡米。12月13日に29歳を迎える横峯にとって、合格すれば20代最後の来季は米国が主戦場になる。「今後のビジョンですか?

 う~ん、決まっているけど、それはその時が来たら言います」。ずっと「30歳で引退」を公言しており、現役最後になる可能性さえある。生涯獲得賞金も10億円を超えた。子どもも欲しい。ゴルファーとして、人として、節目を迎えつつある横峯が大きな1勝を手に入れた。【加藤裕一】

 ◆横峯(よこみね)さくら

 本名森川(もりかわ)さくら。1985年(昭60)12月13日、鹿児島県鹿屋市生まれ。ゴルフは父良郎氏の手作り練習場で8歳から始める。高知・明徳義塾高卒。宮里藍としのぎを削り、日本ジュニア(12~14歳)日本女子オープンのベストアマなど獲得。04年にプロテスト合格、同年に3試合でシード奪取。09年賞金女王。今季は獲得賞金5789万4828円で同ランク14位。155センチ、51キロ。

 ◆生涯獲得賞金10億円

 横峯は今大会優勝賞金1800万円を加え、生涯獲得賞金が歴代2位の10億1678万5434円となった。10億円の大台突破は歴代1位不動裕理(13億3592万7431円)に続き2人目。不動は31歳273日、275試合目で到達し、横峯は28歳345日、305試合目。